解禁!賃金のデジタル支払いについて

query_builder 2023/04/10
労務相談QA
賃金のデジタル支払解禁にあたって、会社がするべきことはありますか?
まずは賃金支払方法の選択肢の1つとして、制度の要否を検討していただきたいと思います。今後、デジタルマネーによる賃金支払が広がることで、資金移動業者よるサービスの向上も期待できます。


令和5年4月より、賃金のデジタルマネーによる支払いが解禁されますが、解禁となってから資金移動業者が厚生労働大臣に指定申請を行い、審査が行われるため、実際に企業が賃金のデジタル支払を導入できるのは、数か月後と言われています。また、現時点では不確定な要素があるため、しばらくは様子を見て、社会全体で制度の導入や運用のノウハウが蓄積されたあとに検討しても遅くないという見方もあります。 この期間に、制度の理解を深め、自社でどのように対応していくべきか検討していただきたいと思います。
表1の通り、デジタルマネーにはいくつかの種類があり、今回対象となるのはスマホ決済で多く採用されている資金移動業によって行われるものだけです。これは、交通系電子マネーに代表されるプリペイド式とは違い、一度デジタルマネー口座に入金しても出金する(銀行口座に戻す)ことができるため、現金や銀行口座預金に近い流動性があることになります。




1.賃金のデジタル支払いの導入を検討
会社として賃金のデジタル支払いに対応するかどうか、メリット・デメリットをみていきたいと思います。また、そもそも社内における需要や理解度はどのようになっているのか、社内アンケートによって調査することも判断材料の一つとして考えられます。


2.就業規則の改定・労使協定
①就業規則の改定
就業規則(賃金規程)には、銀行振込の場合と同様に「社員が希望する場合には、デジタルマネーによる払いにすることがあること」「その場合、社員はデジタルマネー払いの口座指定する必要があること」との規定を追加する必要があります。 また、デジタルマネー払いでは、口座残高が100万円を超える場合には支払いができません。そのため、口座残高が100万円を超えた場合の移動先となる口座を指定する必要があると考えられます。
②労使協定の締結
賃金の銀行振込に関して、法律や省令に定めはありませんが、通達により労使間で協定を締結することが求められており、賃金のデジタルマネー支払いおいても同様となります。 労使協定に記載が必要となる事項は次の通りです。

3.労働者個人の同意を得る
賃金のデジタル支払を導入する場合、下記の2点の要件を満たしたうえで労働者個人の同意を得る必要があります。
①金融機関の口座又は証券総合口座への賃金支払も併せて選択できるようにする
労働者に対して、賃金のデジタルマネーによる支払を強制することは違法です。 例えば、「現金かデジタルマネーか」といった2択は認められず、金融機関等の振込も選択できるようにする必要があります。
②デジタルマネーによる給与支払について必要な事項を説明する
説明が必要な事項とは、次の通りです。
・移動業者の口座での資金滞留を制限する
 「滞留規制」
・移動業者の破綻時の保証
・不正引出しの補償
・換金性
・アカウントの有効期限

企業で賃金のデジタル支払が導入されるのは、まだ少し先のことになりそうですが、ご不明点がございましたら、ご遠慮なく弊社コンサルタントへご相談ください。
<参考>
・全国社会保険労務士会連合会(2022)『月刊社労士』令和4年11月号,p75
・全国社会保険労務士会連合会(2023)『月刊社労士』令和5年3月号,p20 pp38-39
・川嶋英明(2023).「デジタルマネーによる給与支払解禁と企業実務
・実務対応編」『ビジネスガイド』60巻,3号,pp14-26

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