逮捕事案の対応

query_builder 2024/12/10
労務相談QA
社員が逮捕されたと警察から連絡がありました。会社として今後どうすれば良いでしょう。 


逮捕されたことと有罪になるかは別ですので、直ちに懲戒処分を行うことは 避けてください。まずは状況の確認のため、担当弁護士の連絡先を把握するなど、本人と連絡を取ることからはじめましょう。




『逮捕』という言葉は、普段の生活の中ではあまり馴染みがないため、いざ身の回りでその状況が起きるとどうしても焦ってしまうと思います。ただ、「逮捕された=有罪である」という訳ではないので、司法の判断を待たずに早まって社員を解雇したり、懲戒処分を課してしまうと、釈放や不起訴になった後に労務トラブルに発展しかねません。今回は、社員が逮捕された際の会社として採るべき対応についてみていきましょう。



1.逮捕後のながれ
会社としての対応を考えるにあたり、そもそも『逮捕』の状態やその後の流れについて確認します。

逮捕~送致 逮捕とは、被疑者の身体を一時的に拘束して取り調べ等をしている状態です。警察は、逮捕してから48時間以内に検察に身柄を送致するか(=いわゆる送検)、釈放するかを決定しなければなりません。次いで検察は、被疑者の送致を受けたときから24時間以内に勾留するか釈放するかを決めます。逮捕から検察が勾留請求するまでの合計72時間以内については、弁護士以外の者は面会することができず、手紙や差し入れも弁護士を通じて行うことになります。逮捕はあくまでも捜査手続きの一環にすぎませんので、逮捕されただけでは有罪とは言えません。
勾留 勾留とは、被疑者の身柄の確保と罪証隠滅の防止を目的として一定期間身体を拘束することを言います。検察は、勾留請求の日から10日以内に起訴するか釈放するかを決めます。ただし、やむを得ない事由(捜査が終わっていない、など)があるときは勾留期間が延長されます(最長10日間)。勾留中は逮捕と異なり、接見禁止処分がなされていなければ弁護士以外も面会や差し入れができますので、会社担当者や家族が社員に接触できるのはこの段階からです。
起訴 起訴された場合、その後は約1~2か月程度の起訴後勾留を経て刑事裁判が始まります。事件の大きさや罪を認めているか否かで変わりますが、刑事裁判自体は平均3.9か月を要し、その後有罪無罪の判決が出ます。執行猶予は、有罪判決による刑の執行を一定期間猶予することですので、有罪ではあります

2.会社の反応
■本人が罪を認めている場合を除き、有罪が確定するまでは処分しない。
■逮捕、勾留期間中は欠勤または私事休職として処理する。
■保釈されても有罪の可能性が残る場合は、自宅待機や私事休職で出社を控えてもらう。
■本人が罪を認めていたり有罪が確定した場合でも、業務時間外の行為は処分できないこともある。
■懲戒処分は必ず書面で行う。
■懲戒解雇の場合も原則として解雇予告義務または解雇予告手当の支払いが必要なため、所轄の労働基準監督署に「解雇予告除外認定」を申請する。

ここまで見てきた通り、「逮捕された=有罪」ではなく、誤認逮捕や無罪の可能性がありますので、逮捕の段階で会社として何かしらの処分を下すことは時期尚早です。社員の逮捕が発覚した場合は、まずは事件の内容や社員の置かれている状況(前述のフローのどの段階にあるか、罪を認めているかなど。)の確認が最優先です。ただ、逮捕後最長72時間は弁護士以外の面会ができないため、その間は社員と連絡ができるよう担当弁護士を把握するように努めましょう。担当弁護士は本人か親族から確認しますが、勾留期間に移行した場合は弁護士以外も面会が可能になるので、その段階で本人に確認することも可能です。
事件が終結するまでは出勤できないため、その間は原則「欠勤」や「私事休職」として処理し、その間は無給とします。勝手に年次有給休暇を充てることは控え、弁護士経由や本人との面会時に有給休暇を使用するか確認しましょう。この段階で本人が罪を認めている場合は、退職に向けての協議に入ることもございます。
本人が罪を認めていたり有罪が確定したとしても、その行為が業務時間外の場合は必ずしも懲戒処分ができるとは限りません。会社名が報道されたり、取引先や社内に知られたりして会社の信用や社内秩序に影響が生じた場合など、懲戒処分の根拠が会社業務と関連する必要がありますので、処分の有無や内容については慎重に判断しましょう。
懲戒解雇に至る場合でも、解雇の一種である以上、原則は解雇予告または解雇予告手当の支払いが必要とされています。これを回避して即時解雇する場合は、必ず労働基準監督署に「解雇予告除外認定」を申請しましょう。





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