フリーランス新法について

query_builder 2024/03/08
労務相談QA
当社は、フリーランスの方を含め、いろいろな方に業務を委託しています。フリーランスに関する新しい法律ができ、今年の秋に施行されると聞いたのですが、何か注意することはありますか。


新しく作られたフリーランスに関する法律は、「フリーランス新法」や「フリーランス保護法」と言われていますが、正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」といいます。(ここでは、「フリーランス新法と言います。」
この法律は、2023年4月28日に国会で成立し、2024年11月ごろまでには、施行される見込です。フリーランスに業務を委託する事業者様は、このフリーランス新法を正しく理解する必要があります。詳細は、未定の部分もありますが、どのようなことに注意するかを以下にご説明します。


1.背景
フリーランスは、国内に462万人も存在すると試算されています。フリーランスに関するトラブルの相談件数は急増しており、ある相談機関の直近のデータでは、2年間で1万件を超えているようです。フリーランス新法は、フリーランス保護法とも呼ばれているように、フリーランスを保護する目的がありますが、それだけではなく、フリーランスに業務を委託する事業者にとってもトラブルを回避する意味で重要な法律になると言えます。


2.現時点でのフリーランスに関する法律
フリーランス新法の施行前の現時点においても、フリーランスに関する法律は、いろいろと存在しています。たとえば、労働関係法(労働基準法、労働契約法など)、独占禁止法(下請法)、消費者法(消費者契約法、特定証取法)、民法などです。
フリーランスは、個人で業務を行って生計を立てている弱い存在ですが、契約形式上は、雇用ではなく、「業務委託」とされることから労働者の保護は受けません。しかし、その中には、実態は「労働者」であるのに「労働者」として扱ってもらえないフリーランス(偽りのフリーランス)も存在します。本来は、「偽りのフリーランス」は、労働関係法の法執行を強化することで解決できますが、現実は、業務委託契約書の存在が大きく、「偽りのフリーランス」を法的に保護することは難しい現状です。
独占禁止法は、優越的な地位を利用して、不当に行う一定の行為をいわゆる「優越的地位の濫用」と位置づけ、不公正な取引として禁止しています。公正取引委員会が、令和4年度で不公正な取引の疑いがあると「注意」した件数は55件にとどまり、フリーランスを実効的に救済するには程遠い状況です。
下請法は、独占禁止法に比べて迅速に下請事業者の保護を図っていますが、下請法上の対象である「親事業」は、資本金1,000万円超です。フリーランスに業務を委託する事業者は、中小企業も多く、資本金の要件を満たさない場合も多くあります。また、「親会社」が「業務として行う業務」を下請事業者に委託することを前提としているため、「自らの事業とは異なる業務」をフリーランスに委託する場合は対象外になります。  
消費者契約法は、事業として契約する個人は保護の対象から外れます。民法の規定の多くは、任意規定と呼ばれ、当事者が、これと異なる「合意」をすれば、「当該合意が優先」します。したがって、事業者がフリーランスにとって不利な契約条件を記載した契約書を作成し、フリーランスに署名させた場合は、いかに不合理な条件であっても無効と判断するのは難しくなるのが現状です。
つまり、現行法はいろいろ存在するもののフリーランスの実態からは、法律の適用がないか、適用があるとしても実効性が乏しい状況です。いわば各種の現行法の「エアーポケット」が存在しているということです。フリーランス新法は、現行法のエアーポケットを埋める目的があると言っても良いと思います。


3.フリーランス新法の言葉の定義と対象業務
フリーランス新法では、業務を委託する者を、「業務委託事業者」と「特定業務委託事業者」とに分け、業務を受託する者を、「受託事業者」と「特定受託事業者」に分けています。
(1)業務を委託する者
➀「業務委託事業者」 
フリーランスに業務を委託する事業者であって、自らもフリーランスであるものも含まれる。
➁「特定業務委託事業者」 
フリーランスに業務を委託する事業者のうち、自らはフリーランスではない事業者だけをいう。
(2)業務を受託する者
➀「受託事業者」・・・フリーランス以外の受託事業者
➁「特定受託事業者」・・・業務委託の相手方である事業者であって、従業員を使用しないものをいう。ただし、消費者から業務委託を受けて収入を得ているケースは除きます。
※フリーランス新法の適用対象となるフリーランスを「特定受託事業者」という言葉で表現しています


その定義は、個人であって「従業員」を使用しないこと。また、事業者が法人であっても、代表者以外に役員がいない、かつ従業員を使用しない法人です。いわゆる「ひとり法人」です。
※業務委託は、広く役務提供の委託を含み、規制対象となる業種の制限はありません。
<配送業、システム開発、建設業、デザイン、ライター、映画、カメラマン、コンサルタント、講師業、スポーツ指導業等です。>
4.フリーランスに業務委託を行う事業者の遵守事項
フリーランス新法では、フリーランスに業務を委託する事業者が守らないといけない事項が規定されています。先に述べましたとおり現行法のエアーポケットを埋める目的もありますので、遵守事項も労働契約法や下請法等で目にした内容が含まれています。具体的には以下のとおりです。
(1) 契約条件明示義務
業務委託事業者(特定業務委託事業者も当然に含みます。)は、フリーランスに業務を委託する場合には、直ちに契約条件を書面や電磁的方法で明示する義務があります。予想される明示事項は以下のとおりです。(未定です。確定はしていません。)
➀フリーランスの業務内容(給付の内容)
➁報酬額
➂委託者・委託者の各名称
➃業務委託した日
➄給付の提供場所 ➅給付の期日
(2)報酬の支払いに関する義務(60日以内)
特定業務委託事業者が、フリーランスに業務委託した場合には、給付受領日・役務提供日から起算して60日以内に報酬を支払う義務があります。フリーランスに再委託する場合は別の規制があります。
(3) 報酬減額、買いたたき等の禁止
特定業務委託事業者が、フリーランスに対して継続的業務委託をする場合、以下の行為が禁止されます。
➀フリーランスの帰責事由のない給付受領の拒絶
➁フリーランスの帰責事由のない報酬減額
➂フリーランスの帰責事由のない返品
➃通常支払われる対価に比し著しく低い報酬の額を不当に定めること(買いたたき)
➄正当な理由なき物・役務の強制
➅フリーランスに経済上の利益を提供させ、その利益を不当に害すること(ビジネスに関係のない協賛金への強要)
⑦フリーランスの帰責事由なく給付内容を変更し、またはやり直しをさせ、その利益を不当に害すること
(4) 契約解除・不更新の30日前予告義務
特定業務委託事業者が、フリーランスとの継続的業務委託を解除したり不更新としたりしようとする場合は、原則として少なくとも30日前までに予告する義務があります。
(5) ハラスメント対策義務
特定業務委託事業者は、フリーランスに対するセクシュアルハラスメント、パワーハラスメント、マタニティーハラスメントについて、フリーランスの相談に応じ適切に対応する体制整備等の必要な措置を講じる義務があります。
(6) 妊娠・出産・育児介護への配慮義務
特定業務委託事業者は、フリーランスから申し出があれば、その妊娠、出産、育児介護と両立して業務に従事できるよう育児介護等の状況に応じた必要な配慮が求められます。しかし、一定期間以上の継続的業務委託の場合には、義務になります。
(7) 募集情報の的確表示義務
特定業務委託事業者が広告等でフリーランスの募集情報を提供する時は、虚偽の表示または誤解を生じさせる表示はしてはならず、また、正確かつ最新の内容に保つ義務があります。


5.フリーランス新法の各事項に違反した場合
特定業務委託事業者等が、フリーランス新法に違反している場合、公正取引委員会や厚生労働大臣から行政指導を受け、従わなければ命令に引き上げられます。
命令にまで至ると社名が公表されてしまいます。 命令違反および検査拒否等については50万円以下の罰金が科せられ、法人の場合は行為者と法人の両方に罰則が適用されます。
罰金だけでなく発注元企業のブランドイメージに対するダメージが大きいかもしれません。


※フリーランス新法の詳細は、施行日前に公表される予定です。
この法律は、フリーランスに業務を委託されている多くの事業者に関係する法律です。この法律を正しく理解して、トラブルにならないよう注意して頂く必要があります。












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