定期健康診断の目的と対応
先日、クリニックから定期健康診断の結果が個人宛に送られてきました。いつも、個人あてに送られてきた結果の写しを提出してもらっているのですが、ある社員が提出を拒んでいます。 また、そもそも受診をしていなかったという社員や異常の所見があった社員が数名います。会社として社員の健康をどこまで見ていけばよいのかのかもわからず、どうしたらよいでしょうか。 |
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それは、困りましたね。健康診断の実施が、なぜ事業主の義務になっているのか、また健康診断の結果の提出や異常の所見があった社員さんの対応なども含めて、定期健康診断について確認していきましょう。 |
労働安全衛生法では、事業者に対して、1年以内ごとに1回、常時雇用する労働者への健康診断の実施を罰則付きで義務づけています。また、労働者は、事業者が行う健康診断を受診する義務があります。
健康診断の目的は、労働者が業務を起因とした疾病にかかることや脳・心臓疾患の発症の防止、生活習慣病等の増悪防止を図ることです。健康診断の結果を会社側に開示することを拒まれてしまうと、就業上、明らかに問題がある健康状態であっても、適切な措置がとれないという状態に陥ってしまいます。そのような状況で勤務を継続していると、重大な労働災害に繋がる可能性もあります。
また、健康診断の結果を提出しないことを黙認してしまいますと、安全配慮義務違反とされる可能性も極めて高くなります。
健康診断の検査項目は、いずれも目的(次ページ図表)があり、各検査における結果は、病気の早期発見にも繋がり、会社としても社員の健康状態に即した適切な関りや配慮を行うことが出来ます。
定期健康診断では、検査項目が法律によって定められています
検査項目 | 健診の目的(関係する疾患等) |
既往歴及び業務歴の調査 | 適確な疾病情報等の把握、増悪防止 等 |
自覚症状及び他覚症状の有無の検査 | |
身長、体重、腹囲の検査 | 脳・心臓疾患の危険因子の1つ 等 |
視力の検査 | 視機能の評価 ・業務起因性の視力障害・視機能変化の早期把握 |
聴力の検査 | 聴機能の評価 ・業務起因性の聴力障害・聴機能変化の早期把握 |
胸部エックス線検査及び 喀痰検査 | 呼吸器疾患等の一般的なスクリーニング、結核感染の把握 ・結核感染の早期把握 |
血圧の測定 | 虚血性心疾患、脳血管疾患の危険因子の1つ、血圧の状態の若年からの定期的把握 等 |
貧血検査 | 高齢期に増加する貧血、食行動の偏りによる貧血の把握 等 |
肝機能検査 | 肝機能障害の早期把握、増悪防止 等 |
血中脂質検査 | 虚血性心疾患、脳血管疾患等のハイリスク者スクリーニング 等 |
血糖検査 | 脳・心臓疾患の危険因子の1つ 等 |
尿検査 | 脳・心臓疾患の危険因子の1つ ・腎不全の把握 等 |
心電図検査 | 意識消失を伴う不整脈、虚血性心疾患、高血圧に伴う心臓の異常等の把握 等 |
「労働安全衛生法に基づく定期健康診断等のあり方に関する検討会」報告書(平成28年)より作成:厚生労働省資料
健康診断の実施後の流れについては、以下の通りです。
健康診断の結果、異常の所見があると判断された労働者(異常所見者)については、医師等の意見を聞くことが必要です。そして、この意見に基づき、作業環境や作業負担、時短などの就業上の措置が事業者の義務になります。産業医の選任義務がある事業場では、産業医から意見を聴くことが適当ですが、選任義務のない事業場については、『地域産業保健センター』の意見聴取のサービスを利用することもできます。
健康診断の受診率が低い、異常所見者の対応に困っている、産業医について困っているなど、お悩みでしたら、当社コンサルタントにお気軽にご相談ください。
9月は「職場の健康診断実施強化月間」です! | |
厚生労働省では、労働安全衛生法に基づく一般定期健康診断の実施、その結果についての医師の意見聴取及びその意見を踏まえた就業上の措置の実施について、事業者の皆様に改めて徹底していただくことを促すため、毎年9月を「職場の健康診断実施強化月間」と位置付け、集中的・重点的に啓発を行っています。 | |
◉詳細は厚生労働省のHPをご参照ください⇓
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_42631.html |