厚生年金基金の廃止について
厚年基金は全国に577あり、受給者と加入者は計約730万人(平成23年度末)。うち
287基金で、運用損や2月のAIJ投資顧問による年金資産消失判明を受けた積み立
て不足が1兆円以上生じています。 厚生労働省は11/2の社会保障審議会年金部
会において、今後10年間で厚生年金基金を廃止することを柱とした改革案を提示し
ました。 最終的な不足分は、会社員が加入する国の厚生年金本体の保険料で穴埋
めとし、専門委が年内にまとめる意見を踏まえ、来年の通常国会へ関連法案提出を
目指すようです。 この法案が来年中に成立・施行されれば基金制度は平成35年に
廃止される見通しです。 同省は初会合で積み立て不足への基本対応について、「基
金の母体企業が責任を持って負担することが前提」と主張し、運用などで失敗した公
的年金の不足分の返還を企業側に強く求める考えを表明。 同時に受給者側にも
「一定のルールの下に負担を求める」として、減額支給を求める考えを明らかにしまし
た。
一方で同省は不足分を補うため、年金給付のために用意している約120兆円の厚
生年金積立金に着目。不足分が1兆円だけなら、厚生年金から取り崩しても年金給
付に支障がないうえ、保険料の値上げにも直結しないと判断しているようです。
いよいよきました基金の廃止が。 ところで気になる点が、廃止後の負担が、①基金
の母体企業②受給者 ③厚生年金 となっていることです。 120兆円あるから大丈
夫といわんばかりですが、完全にマヒしています。 この6年ほどで150兆円近くあっ
た積立金が118兆円に、30兆円近く目減りしていることをどのようにとらえているの
でしょうか。 100年は大丈夫といっていた年金が、ほんの数年で大幅に財源を減ら
しているにもかかわらず、この無責任対応は許しがたいです。
そもそも厚生年金は豊かな財源を誇っており、60歳からの支給が可能な優良な年
金制度でした。そこに目を付けた厚生労働省は、赤字で大変であったJR共済をはじ
めとした3共済(JR、JT、NTT)を民営化と称して厚生年金の中に無理やり押し込み
ました。 これがボディーブローとなって厚生年金の支給開始年齢が、定額部分から
順次61~65歳に引き上げられていきました。 これに味を占めた厚労省は、さらにこ
の3つの団体の合計よりももっと大きな赤字に喘いでいた農林漁業団体共済(元は厚
生年金の中にあったものを構成員が若い戦後の早い段階で共済に移行)を、密かに
厚生年金にぶち込んできました。 これでさすがの厚生年金も財源が揺らぎ、報酬比
例部分のカットが行われるようになりました。 これだけでも許しがたいのに、実は厚
生年金基金には現役でも700人を超える厚労省役人(社会保険庁OB)が天下って
おり、多額の退職金を貪り、食い物にしてきた事実も判明してきました。 さらに腹立
たしいことには、3共済は赤字のため民営化と同時に厚生年金に放り込んできました
が、郵政の民営化に伴って民営化されたゆうちょ銀行やかんぽ生命などの民営会社
は、民営化後5年が経過しているにも関わらず、なんと未だに共済のままです。 因
みに郵政グループの共済は黒字です。
皆さんはこのことをどのように思われますか。 特に財務省と厚生労働省の役人は
厚生年金基金を食い物にしてきた張本人ですが、彼らは今回の基金廃止に際しノー
リスクのようです。 許しがたい暴挙です。 新しい政権には、本件の決着として赤字
基金の財源の一部に、公務員の共済も当てていただくよう働きかけていただきたいも
のです。 あるいは共済制度を廃止して、厚生年金に一本化することによって、彼ら
の不正と暴挙を防止するように抑止力となる法律の制定を求めます。 このような法
案を通していただければ、政党の支持率も上がるものと思われます。 次は自民党さ
んでしょうか? 期待しております。