AIJ問題:厚生年金基金の危うさ
投資顧問会社「AIJ投資顧問」の企業年金消失問題に絡み、旧社会保険庁(現日
本年金機構)幹部23人の厚生年金基金への再就職が判明。 ノンキャリアを含める
と05年当時、全国約500の厚生年金基金に600人以上の同庁OBが天下っていまし
た。またその約7割は資産運用の責任者を務める常務理事、約2割は事務長や事務
局長とのこと。 旧社保庁に資産運用のプロがそれほどいたとは聞いたことがありま
せん。 AIJは同庁OBのネットワークを営業に利用したとされ、小宮山洋子厚生労働
相は実態を調査を命じたようですが、遅きに失した感があります。
厚労省は、天下りの社保庁職員が退任した後は公募に切り替えるよう厚生年金基
金に指導していましたが、そこに強制力はなく、現在も相当数のOB職員が在籍して
いるとみられています。現実に当社クライアントの加入している厚生年金基金では黒
字の際には天下りが継続して行われ、赤字に転落すると天下りが止む傾向にありま
す。 意図的に天下りが実施されているとしか思えませんでした。
私は過去 1200 回以上、全国でセミナーや企業研修・勉強会を実施しておりますが、
その中で 9 割以上で国が運営する退職金制度と称する仕組みについて批判してきて
おります。 出来ることなら早期に制度を見直し、退職金制度のリストラクチャリング
(再構築)をするようおすすめしてきました。 それは何故かというと、制度本来の目的
から実態が大きくずれてきているからです。 もっとはっきり言いますと国の運営する
制度は退職金制度ではなく、福利厚生制度というべきものであり、支払った全ての金
銭の所有権は労働者に移転してしまい、会社には一切の権利は認められないという
恐ろしい制度であるということです。 これはいわば賃金に似た意味合いのものであり、
退職金とは厳密には言い難いものです。
多くの民間企業では厳しい経済情勢の中、必死で給料の維持を図っています。 そ
こに労働社会保険の料率アップが毎年行われ、総額の人件費は上昇する一方です。
さらに最低賃金は毎年上昇し、一方でパートにシフトしようにも、今年から 500 名以上
の企業対象に、またいずれは全てのパート労働者を雇用する企業に対して社会保険
適用のバーを引き下げてくることはほぼ決定のようです。 そこまで締め上げておい
て公務員改革は一向に進まないこの国は一体どうなっていくのでしょうか。 そこにさ
らに天下りのための「国が運営する退職金制度(厚生年金基金、税制適格年金(2012
年 3 月末で廃止)、中小企業退職金共済、確定拠出年金(401k)、確定給付年金)等」
が何故経済界でこれ程幅を利かせているのでしょうか。
日本の企業の98%を占める中小企業では、例え経営が厳しくなったとしても、銀行
や保険会社をはじめとする金融機関やJALのような半公半民の企業と違って、余程
の経済情勢の悪化が無ければ、殆ど救済されません。 中小企業の経営者とそこで
働く社員は、自らの身は自らで守らなければなりません。 従って自社の労働の対価
である「賃金」、自社の業績の対価である「賞与(業績分配給)」、会社からの自社の社
員への愛情である「退職金(功労一時金)」はそれぞれ区別し、支払い方や配分、条
件やファンドについては各社各様で決定し、独自性を維持する必要があると思います。
世間相場などに左右されず、「よそはよそ、うちはうち」の考え方を徹底し、長いスパ
ンで会社を運営できる環境を早期に確立していただきたいと思います。 厳密に言え
ば退職金制度はあくまで会社が保有権を有し、社員の退職に際にその権利の行使を
会社主導で実施する方式にするべきであり、そのファンドは、いついかなるときであっ
ても会社が経営判断に基づき、自由に運用できるようにするべきです。 そうしなけ
れば、多くの社員が潜在的に最も要望する、会社倒産の予防が実現できません。
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