ゼネラリストからスペシャリストへ!

query_builder 2013/12/10
岡弘己の今月のアドバイス

 何故日本はここまで戦争に強い国だったのでしょうか。 そして何故大東亜戦争で完膚なきまでに叩きのめされたのでしょうか。
私は、戦争(戦争だけでなく喧嘩やもめ事は全て)は相手に対する情報不足・理解不足が原因で発生すると考えています。また戦争で負ける要因の第一は慢心であり傲慢な態度ではないでしょうか。人も国も謙虚さを失った時に周囲が見えなくなってしまうようです。


 戊辰戦争で官軍は錦の御旗を掲げ、西南戦争では戦の素人の有栖川宮熾仁親王を総督として戦い、その参謀長として戦上手の山形有朋がこれをサポートしました。
また、明治の元勲が生き残っていた日露戦争まではこの参謀組織が機能して勝利をおさめることが出来ました。その後参謀が重要ということになり、明治16年に陸軍大学校、明治21年に海軍大学校を作り、参謀の養成を行ってきました。 軍上層部は、参謀が優れていると戦(いくさ)に勝てると思い込んでしまったのでしょう。その参謀が
満州事変を起し、更に日独伊三国軍事同盟を叫び、大東亜戦争では、机上の空論で多くの将兵を死に追いやってしまったのです(戦死240万人以上)。しかもその責任を取って命を絶った方は、陸軍大臣阿南惟幾(あなみこれちか)や神風特別攻撃隊生みの親である大西瀧治郎中将、最後まで特攻攻撃を指揮した第五航空艦隊司令長官の宇垣纏(まとめ)中将等、ほんの一握りでした。
 何故このようなことになってしまったのでしょうか。 それは日本の軍隊が官僚化してしまったからです。 陸軍士官学校や海軍兵学校、陸軍大学校や海軍大学校では情報の重要性を認めない教育をされます。その教育の中からいわゆる偏差値エリートが作戦参謀になって出世の階段を上っていき、指揮官となっていきます。 日露戦争から35年ほどの間、戦争らしい戦争は無く、一部の局地戦のみでした。 そのため
これらの指揮官の多くは戦争よりも、自らの出世を意識していたことは広く知られています。
 特に大東亜戦争においては、戦艦や航空母艦を沈める方が評価は高く、輸送船を沈めても評価ポイントはゼロでした。 結果は皮肉なことに戦闘艦艇ばかりを攻撃して、輸送船を無傷で放置し、相手に食料や兵器を与えてしまい、味方は飢えて戦えず、逆に食料不足になった味方を救うべき輸送船の多くは沈められてしまい、補給が続かず、虎の子の駆逐艦で夜間のネズミ輸送を繰り返したにもかかわらず、駆逐艦もその多くを沈められ、結局2万人が餓死したうえで、撤退を余儀なくされたガダルカナルの戦いが全てを象徴しています。
 このガダルカナルでの実情を無視して無謀な戦いを行ったのがエリート参謀の辻正信中佐(戦後:衆・参議員:現ミャンマーを訪問した際に行方不明) でした。 この辻中佐は陸軍幼年学校、陸軍士官学校を首席で卒業、陸軍大学校を3位で卒業したエリート中のエリートです。この男はノモンハン事件・1939年 を画策し、日独伊三国軍
事同盟締結に奔走、 大東亜戦争開戦当初のマレー半島上陸の際、この男の作成した小冊子が配布されました。その中で「土人」という表現がなされていました。「八紘一宇(道義的に世界を統一して天下を一つの家のようにする)」を旗印にアジアの開放を掲げていた帝国陸軍の高級参謀が、現地の人々を土人と表現していたのです。
このような浅はかで傲慢な考え方で戦争を遂行したから、インドネシア等一部を除いて、フィリピン、ニューギニア等で反発を招いたのです。


 戦争が起こり、戦争に負ける要因は、繰り返しますが相手に対する情報不足・理解不足と慢心・謙虚さの欠如です。 日露戦争まではプロフェッショナルとしての専門家が活躍していましたので、何とかギリギリのところで勝利を得ることが出来ました。
その日露戦争の勝利の要因の一つである情報戦では「情報収集分析」、「謀略・調略」、「宣伝」の 3 つが重要とされています。
日露戦争のときは明石元二郎大佐が「情報・謀略」をやり、ロシアで革命を煽り、後方から支援をしました。金子健太郎(ハーバード大学でセオドア・ルーズベルトと同級生)は「宣伝」をやり、世界中に日本の勝利が宣伝されました。正にプロフェッショナルの仕事っぷりでした。
 ところが日露戦争後の35年で陸海軍軍人は3代目になり、官僚化して滅びます。
また同様に戦後の官僚も3代目あたりから硬直化し、偏差値エリートが幅を利かすようになりました。 戦後の日本は優秀な人がゼネラリストになり、ゼネラリストになれない人がスペシャリストになるとの誤った解釈がまかり通ってしまいました。
 現代はスピード化の時代となり、ドッグイヤーからマウスイヤーへと、つまり以前の7倍から35倍のスピード化の時代となっています。 ところが偏差値エリートは既得権益集団と化し、リスクの高い変化を拒み、このスピード化の時代を乗り切ることができません。 現代はブルーカラー・ホワイトカラーから変化への対応が出来るゴールドカラー(スペシャリスト)へと時代が進化してしまったのです。 旧帝国海軍が大艦巨砲主義を最後まで捨てず、制空権を失って大敗北を喫したように、滅びの方向に一直線に向かっているような気がします。
 政治の世界でも、ビジネスの世界でも今後は益々意思決定のスピードが求められてきます。 我が国の経済が低迷した要因の一つはこの意思決定のスピードの遅さです。 リーダーに求められる資質は、スペシャリストになることと、意思決定のスピードとなるでしょう。 これから起業される若きリーダーの方には、是非歴史から先人の経験と知恵を学んでいただき、この意思決定のスピードを修得していただき、だれにも負けないスペシャリスト(ゴールドカラー)となることを目指していただきたいと思います。
 歴史を学ぶ人は先人から多くを学ぶことが出来ます。歴史は誠に多くの示唆に富んでいます。特に近現代史はごく近い時代ですので、生存者や多くの文献も残っており、学びがいのある時代です。 現代史をご理解されたいと思う人は、まず日本の明治維新後の近代史に目を向けてください。 特に戦争に至るプロセスは判断に迷う現代においては非常に多くの解決策を提示してくれます。
 今年の年末 12/21 に、作家の百田直樹さん原作の「永遠の0(ゼロ)」が全国で上映されます。400 万部の売上があり、多くの若者にまで読まれている素晴らしい作品です。私が過去に読んだ数多くの戦争関連の書物が参考にされていて、実に当時の感覚に近い描写が特徴の名著です。
 この映画をまだ見ておりませんが、原作の素晴らしさから、多くの人、特に時代を担う若者に見ていただきたい作品です。来年のご挨拶は 「永遠の 0 を観た?」 になれば嬉しいです。


 皆様、来年は激動の年になります。是非とも日本を良い国にしていきましょう。
今年 1 年、お世話になりまして有難うございました。 そして、皆様、良いお年をお迎えください。

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