今後の日本の労働環境はどうなる!?

query_builder 2024/06/10
岡弘己の今月のアドバイス
2024年6月現在、我が国の労働環境は大きく変わりつつあります。
大企業を中心とした大幅な昇給の影響を受け、徐々に中小企業でも昇給に舵を切る企業が増加してきています。物価上昇に伴って、名目賃金と実質賃金においても少しずつ改善がみられていますが、今のところ実質賃金はまだまだ追いついておらず、物価上昇の影響を受けて、一般国民の懐事情は厳しいというのが実情です。
大企業の内部留保は550兆円を超えており、今年も+40兆円といわれ、毎年増加している状況ですので、問題はありませんが、中堅中小企業の労働者や自営業者においては、現在の物価上昇の中でも、価格に転嫁できる業種とできない業種があり、しばらくは厳しい状況が続きそうです。
上記の図は先進国の中での実質賃金と名目賃金の比較となっています。
1992年当時のバブル崩壊時点からの各国の比較表ですが、(戦後の1945年当時からの比較とするなら、全く別の曲線を描きます。)、日本の一人負け状態ですね。
私の持論ですが、1992年前後の時代は、「24時間働けますか!」が流行語大賞の3位に選ばれたように、GDPが毎年3~5%の成長をしていた我が国では、国民が総中流といわれるくらい、生活水準が上がり、その前提で滅私奉公が求められていました。
一方、当時の労働環境は、欧米比で20年くらい遅れていたように思います。その欧米各国の労働時間は当時から余り変わりませんが、我が国はこの30年の間に劇的に変わったように思います。
労働時間は先進国並みに2,000時間を下回り、未払い残業は大幅に減少、休日も増加、休日日数が増え、有給休暇の取得率も上昇となり、アジアだけでなく、欧米の労働者も数多く日本企業で働くようになりました。ようやく先進国の仲間入りを果たせたのです。背伸びし過ぎてGDPで世界第2位を達成した1960年代後半~1990年代までは、真の先進国とは言えなかったのです。
漸く身の丈に合った経済環境と労働環境が整ったともいえるのではないでしょうか。
現在自民党を中心に(特に岸田首相の肝いりで)外国人労働者の受け入れに積極的です。この政策の背景は、上図に記載されている欧米先進国が、軒並み中東・アフリカ諸国からの移民を受け入れ、人口を増やし、消費を促進し、GDPを上昇させたことにあるのではと考えます。 以前の本コラムでも申し上げましたが、外国人の受け入れには光と影があり、一長一短です。民度の低い地域からの移民の受け入れは、極端な治安の悪化を招きます。最近では外国人の犯罪者も増加傾向にあり、国民の生命と財産の維持安定が脅かされつつあります。
中国やタイからの実習生労働者がそうであったように、初年度は意欲も、能力も極めて高い人材が入国しますが、制度導入後十年もすると、実習生として入国する外国人労働者のレベルは、徐々に劣化していく傾向にあります。特に近年では円安の影響が顕著で、彼らの受け取る賃金が、大きく減少していることも一因です。今では、あれほど話題になっていたベトナム人実習生のピークは過ぎ、フィリピン、インドネシア、ミャンマーに移ってきています。
また、不法滞在も極めて高いレベルで増加傾向にあるようです。強制送還の費用の大半は国費ですので、税金が使われます。入国に関わった現地の事業者に負担させるなど、ルールを明確にしていくべきでしょう。
大企業においては、昨年の2倍以上の勢いで、高年齢者を中心に早期退職やリストラが進んでいます。日本最大の労組を持つ公務員も、今後は例外ではなくなるものと思われます。これから数年は、IT化が進まない中小企業を中心とした受け皿に、労働移動が進んでいくと思われますが、益々効率化が進み、労働力は徐々に充足されていくでしょう。
今後は手に職(や資格)を持った職人(プロフェッショナル)が求められ、人間が介在しなければならない業種が脚光を浴び、過酷な競争の中で生き残った中小企業の人手不足は、解消に向かうものと思われます。
我が国の人口は2024年時点で、1億2,127万人となり、前年比83万人減少しました。
30年後には約3,000万人、40年後には約4,000万人が減少するといわれております。
現時点で、関西6府県で2,035万人、北陸3県で293万人、四国4県で372万人、中国5県で725万人です、これに加えて福岡県の510万人と佐賀県の80万人を加えた総数でようやく4,000万人をわずかに超える数字になります。 西日本はほぼ全滅ですね。このような状況で真面目な経済活動は不可能でしょう。
今我が国での喫緊の課題は、いうまでもなく人口減少に歯止めをかけることですが、同時に業務の効率化に着手していくことが求められます。これは待ったなしです。
業務の効率化への投資に余裕が無い企業は、極端な話ですが、企業価値があるうちにМ&A(企業売買)をしていくことも必要かもしれません。
時代は一年を通しても極端な変化はありませんが、5年・10年のスパンで見ていくと大きく変化しており、うかうかしていると時代そのものに捨てられてしまうことになりかねません。 総人口が減っていくということは、消費や仕事そのものが減ってくるということですので、今後はスタートアップのベンチャー企業や成長期の企業、大企業等を除き、「売上高」ではなく、「利益額」にフォーカスしていかなければならなくなると思います。これからやるべきことが、山のようにあることを多くの経営者の皆さんが、今更ながら実感されることでしょう。 自社の強みと弱みを見極め、社員のマンパワーを向上させ、労働環境の整備し、セキュリティーを強化し、DX化を図り、生産性の向上と業務の効率化への布石を、従来以上に求めていかなければならなくなると思います。
経営者の皆さまには、是非自らの言葉で、漠然とした不安を抱える社員の皆さんに、今後の厳しい我が国の現状と激変する労働環境について発信していただき、危機意識を持たない社員さんの意識改革を行っていただきたいと思います。更にその解決策を提示して、共に乗り越えていくためのビジョンを示していくことで、社員の心に「明かり」をともしていただきたいと思います。
社員への発信を怠り、社員の不安や不信感を放置している経営者が、残念ながら多いように思います。
10年先、20年先の大きな変化を見据えて、変化に対応する強靭な組織づくり、そのための社員の育成は、最早待ったなしです。
変化への対応でお困りごとがありましたら、是非弊社にお声掛けください。

“ブレインをサプライさせていただきます!”

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