中小企業の現実的な採用戦略について!

query_builder 2024/09/10
岡弘己の今月のアドバイス
2023~2024年にかけて、私が受けた相談のうち4割が事業承継関係、1割がM&Aとなっており、残り5割が人事労務・その他となっています。その中でも最も多い相談が採用に関する事項です。 以前と比べて極端に採用が厳しくなってきたと嘆かれる経営者が急増しています。当社でもここ2年間ほど募集をしておりますが、社員が「一緒に働きたい」と思う方にはなかなか出会えないことが実情で、面接はするも採用には至っておりません。
そもそも何故採用が厳しいのかを分析しますと、前頁図①の通り、昭和20年代生まれの人口が2、165万人となります。その内65歳まで生存する者の割合が、男性は86.7%、女性は93.6%、75歳まで生存する者の割合は男性が71.9%、女性が86.5%となっております。大雑把に計算すると65歳時に90.15%の1、947万人が存命、75歳時に79.2%の1、710万人が存命となります。
日本の法律上の定年は60歳ですが、継続雇用が義務付けられており、70歳前後まで働くと想定すると、ここ10数年で、昭和20年代の労働力は1、900万人ほどが失われたと想定できます。(実際の労働力はここから労働していない者の総数を差し引きます。)
逆に入職する世代である平成5年~平成14年頃の生まれの人口は1、190万人となり、労働力としては700万人ほど減少したことになります。ここに外国人労働者が205万人(令和5年)プラスされますので、差し引き500万人ほどが不足することになります。今問題となっている労働者の不足は、これが原因となっています。  
更に大企業を中心に、新卒労働者を大量に確保する一方、中高年齢労働者はリストラされる傾向が強く、中堅中小企業においては新卒を採用することが極めて困難な状況であり、更には中途採用に関しても、10数年前とは打って変わって、売り手市場となり、人材不足は切実な問題となっています。そのような環境下では採用に力を入れるだけでなく、退職を抑制することも重要となってきます。
<退職理由の本音ランキング>
1位:上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった(23%)
2位:労働時間・環境が不満だった(14%)
3位:同僚・先輩・後輩とうまくいかなかった(13%)
4位:給与が低かった(12%)
5位:仕事内容が面白くなかった(9%)
6位:社長がワンマンだった(7%)
7位:社風が合わなかった(6%)
7位:会社の経営方針・経営状況が変化した(6%)
7位:キャリアアップしたかった(6%)
10位:昇進・評価が不満だった(4%)


特に上司や経営者の人間性に嫌気がさすケースが経験上多いように思います。上記のような現状を踏まえ、今後中小企業がとるべき採用策とはどのようなものかと推測しますと、キーワードは次のとおりです。
<キーワード>

① 人間関係
② 尊敬できる上司
③ 残業
④ 働きやすい職場
⑤ チームワーク
⑥ アットホーム
⑦ 調整力
⑧ 残業ルールの明確化
⑨ 社員への還元
⑩ 適正な評価
⑪ モチベーション
⑫ ベンチャー精神
⑬ プロフェッショナル
⑭ リーダーシップ
⑮ 相互扶助
⑯ 女性が働きやすい
⑰ キャリアアップ、ステップアップ
⑱ 資格取得支援、研修制度 
etc.・・・。
他にも沢山ありますが、割愛させていただきます。
要は「社風の改善」がどの企業にも必要な時代になってきているのです。今在籍している社員が、何故辞めずに会社に留まっているのか・・・ということも掘り下げていけば、要因が明確になってくるでしょう。  
社風の改善は痛みを伴うものです。今の自分を否定することも必要でしょう。コストもかかります。しかし、たったの10年余りで、買い手市場から売り手市場に変わってしまったのです。上記人口統計データから、今後更に大きな労働力不足に陥ることは明白です。
今ここで血を流す覚悟で社内の改革を行うことは極めて重要なことだと思います。



<採用の相談で多い項目> ● どのような広告媒体・業者にお願いしたらいいのか
● 良い人材紹介会社を紹介して欲しい
● 給与をいくらに設定すれば良い人材を確保できるのか 
● 人材確保で良い助成金がないか etc.・・・
しかし、いくら人材紹介会社に費用を支払っても、「良い社風」を構築していないと、入社後半年もたたないうちに退職するといったことが現実に起こってしまいます。
2019年4月~2024年3月に実施された“働き方改革”によって、将来への生き残りをかけて、本気で取組んで血の汗を流した会社は、内外から評価され、今後成長していくことでしょう(上図②)。
一方で、改革の痛みを回避し、自分の在職中は大過なく過ごしたいとか、出来れば今のままで過ごしたいとか、自分のエゴを丸出しにした経営を行っている会社は、残念ながら、社員の心が離れていき、退職者が増加し、その補充もおぼつかないので、結果的に衰退していくことになるでしょう。
では、どのようにしていけばいいか。  
<経営者が、自分が22~23歳の新卒者だったとしたら、今の会社に就職したいと思うかどうか>がポイントとなります。経営者は会社の実態を把握していますので、この質問は自分自身の良心への問い掛けになります。そこで出てきた答えが「ハイ!」であれば、迷わず経営に邁進していただければ良いと思います。答えが「ノー!」であるならば、その原因を探り、早期に改革に取り組んでいただきたいと思います。
コストを最小限に留め他力本願ではなく自力で改革を促進するためにも、自社の実態把握をお勧めします。
当社では労務品質診断というサービスの提供をしておりますが、これは社内の問題の可視化に役立ちます。
その上で、問題点の炙り出しと、その把握→問題点の社内での共有→解決のための施策の検討と阻害要因の実態分析→解決を目的とするプロジェクトチームの編成→個別の役割分担→解決の期日の決定→プロジェクトの実行→プロジェクトの検証・反省等です。
このようなことを実行していく過程で、社内の膿が多数出てきます。
あらかじめどのような膿が出てくるかを想定した上で、チームで取組んでいくと、社員の問題意識が高まり、参加意欲が増大し、一つの方向に流れが出てきます。
このような成長や改革に向けたエネルギーは、社員を前向きに変えていきます。
社風改善に向けた経営者の前向きな姿勢は、社内を活性化します。経営者の発する将来への夢や希望は、社員の心に灯をともします。このような仕掛けをした上での採用活動は極めて効果的です。
経営者の皆さんは、人材の確保に関しては逆風が吹く中ではありますが、是非「社風の改善」と一体となった採用活動を実施していただきたいと思います。
そうすることで、離職率が減り、良い社風の醸成によるエネルギーに惹かれて、より良い社員が入社されることに繋がってくると思います。

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