入り口で手を抜くと出口で10倍苦しむ!?
最近解雇に関する労務トラブルが頻発してきました。良かれと思って採用したところ、 ①能力が伴わない ②やる気が感じられない ③勤務態度が悪い ④経歴詐称が発 覚した ⑤遅刻早退をする ⑥業務に対する適格性が感じられない ⑦健康状態に 問題がある 等々の問題が発生し、他の社員からのクレームが多数寄せられるといっ た状況に追い込まれてしまう経営者からの相談が増加しています。
私の個人的な考えですが、採用で手を抜くと退職時に相当な苦労をする傾向があり ます。
従って経営者は、採用時にできるだけ時間をかけ、集められる情報は集め、採用の 可否を決定しなければなりません。ここで努力して多数のフィルターにかけることが重 要です。
一旦採用してしまうと労働者は様々な法律で保護されます。つまり既得権益者にな ってしまうのです。 経営者と採用担当者はこのことを十分認識し、細心の注意のもと に人を採用しなければなりません。
一方、「国民を失業状態に置きたくない、納税できる状態にしたい」 と国は考えて いるので、経営者が油断していると様々な足かせをはめてきます。 経営者は労働基 準法以外の各種法律の存在を知らなければなりません。 転職を繰り返す労働者の 中には、労働者保護の法律に長けた人物も散見されるようになってきました。 特に 私が大嫌いな法律であり、採用時に注意しなければならない法律に 「職業安定法」 があります。 その中で以下の点には十分ご注意いただいたうえで採用に臨んでいた だきたいと思います。
≪厚生労働省から採用面接時に、以下のことを聞いてはいけないという指針が出て います。
本人に責任のない事項
・本籍・出生地に関すること
・家族に関すること(職業、続柄、健康、地位、学歴、収入、資産など)
・住宅状況に関すること(間取り、部屋数、住宅の種類、近隣の施設など)
・生活環境・家庭環境に関すること
本来自由であるべき事項
・宗教に関すること
・支持政党に関すること
・人生観・生活信条に関すること
・尊敬する人物に関すること
・思想に関すること
・労働組合・学生運動など社会運動に関すること
・購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること
さらに職業安定法(法に基づく指針)では、募集を行う際、原則として収集してはなら ない個人情報が以下のように規定されています。この職業安定法違反の場合は罰則 として6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金が定められています。
・人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地その他社会的差別の原因となるおそ れのある事項(家族の職業、収入、本人の資産等など)
・思想及び信条(人生観、生活信条、支持政党、購読新聞、雑誌、愛読書)
・労働組合への加入状況(労働運動、学生運動、消費者運動その他社会運動に関す る情報)≫
如何でしょうか?
どのような団体がこの法律を作ってきたのか想像がつくでしょう。 過去にある宗教団 体が大挙してお客様企業に集団就職(信者を増やす目的で、身分を偽って入社)して きて問題を起こし、売り上げ激減した事例や、親が暴力団員で脅迫された事例、採用 したら労働組合を作られ、会社を廃業に追い込まれた事例など、職業安定法で定め られたいわゆる「仕事に直接関係のないことを聞いてはいけない」といった考えで規 制されている項目(斜体・下線)によって会社は直接・間接に被害を受けるのです。そ の結果、物言わぬまじめに働く労働者と経営者が多大な被害を受けるのです。
政治家は一部の大騒ぎする問題社員とイデオロギーで固まった弁護士によっていか にも多数の人が大騒ぎしているように勘違いしていますが、マスコミに取り上げられる 事例はレアケースであることが多く、圧倒的多数の人は物言わぬ善良な市民であり、 世の中は一部の悪質な人間によって著しく汚されているのです。 職業安定法に戻り ますが、会社を安定させ、社員の雇用と生活を守っていくためには、社内に絶対に悪 質な労働者の侵入を許さないという信念とルール作りが不可欠です。 「よそはよそ、 うちはうち」 という会社独自のローカルルールを作って、会社を守り、社員を守ってい ただきたいと思います。 口頭や文書で聞いてはいけないなら、考えを変えてその人 物の今まで歩んできた履歴を確認すればいいのです。 この通信で何度も取り上げ ていますが、
① 前職の退職証明書の取付 (退職理由の詳細を確認し、辞め方のパターンを見抜 く)
② 職務経歴書の取付 (細かい職歴と担当実務のチェック 能力不足の指摘に使え る)
③ 採用後1カ月以内に源泉徴収票の取付 (年収・給与詐称、労働問題への関与の チェック)
④ 運転経歴証明書の取付 (事故パターン、規範意識のチェック)
⑤ 保険証券の取付 (自賠責:法律の順守意識、任意保険:対外的責任感の有無の チェック)
⑥ 年金手帳・年金記録台帳の取付 (規範意識、履歴書の経歴詐称のチェック)
⑦ 採用面接シートの取付 (①運の良い人 ②職務に忠実な人 ③親孝行な人 の 選別)
⑧ 健康診断書の入社前取付 (健康障害の有無チェック)
⑨ 入社前に保証人2名の取付 (人物保証・金銭保証だけでなく不正の抑止力)
⑩ 短期の労働契約の締結 (不良社員の雇い止めによる排除)
代表的なものでも上記の①~⑩があり、これによって悪質労働者の暗躍を阻止す ることができます。 これ以外にも個別にローカルルールを定め、不良社員の発生予 防に努め、社員の活性化を目指していただければと考えます。 問題が発覚してから では手遅れです。ぜひ早めにお声かけください。 ブレインをサプライします。