算定基礎届(定時決定)のポイント

query_builder 2023/04/10
社労士業務のワンポイント

算定基礎届(定時決定)とは、社会保険料の元となる標準報酬月額が実際の報酬(給与)と大きな差が生じないように年に1回行われる標準報酬月額の見直しのことです。毎年同じ時期に定期に実施されることから「定時決定」と呼ばれています。ここで見直された標準報酬月額は、その年の9月から翌年8月までの各月に適用されます。今回は申請のポイントについて紹介していきます。


標準報酬月額とは
標準報酬月額とは、毎月の健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料を計算する基礎となるものです。報酬は月給、日給、時間給、出来高給など、様々な種類があります。そのため毎月の支給給与額をもとに保険料を算出するのではなく、予め等級ごとに決められた標準報酬月額を用いて社会保険料の計算をすることで計算しやすくしています。
報酬に含まれるもの
基本給、役職手当、職務手当、家族手当、通勤手当、住宅手当、残業手当などのほか、現物支給など労働の対象として現金または現物で支給されるもの。
※金銭に限らず食事や、定期券を現物で支給している場合も報酬に含まれます。また社宅を提供している場合は厚生労働大臣が都道府県ごとに定めている価格に換算して報酬を算出します。
報酬に含まれないもの
臨時で支給されるもの、年3回以下の賞与、見舞金、退職手当、出張旅費、交際費、慶弔見舞金、傷病手当金などのほか、現物支給される作業着や制服など。
算定基礎届の対象者
算定基礎の対象者は、7月1日時点で健康保険・厚生年金保険の被保険者であるすべての方が対象です。もし、休職中であっても、被保険者の方は算定基礎届を提出する必要があります。なお厚生年金保険の資格を喪失する70歳、健康保険の資格を喪失する75歳以上であっても、在職老齢年金の受給金額に影響するため、70歳以上被用者として、届け出の対象となります。
<対象から除かれる方>
(1) 6月1日以降に資格取得した方  
(2) 6月30日以前に退職した方
(3) 7月改定の月額変更届を提出する方  
(4) 8月または9月に随時改定が予定されている方


算定基礎届作成の手順


1. 4月、5月、6月に支払った報酬(給与)を確認。
年3回以下支給される賞与などは報酬に含まれません。また3ヵ月、6ヵ月単位で購入した定期代については、その額をそれぞれの月数で割って1ヵ月当たりの額を算出し、各月の報酬に含めます。  
2. 各月の報酬支払基礎日数を確認。
対象となる4月、5月、6月の3ヵ月間は、いずれも支払い基礎日数が17日(※特定適用事業所などに勤務する短時間労働者は11日)以上あることが必要とされています。したがって17日(短時間労働者は11日)未満の月があればその月は対象から除外します。  
3. 3ヵ月分の平均額を算出する   
①支払基礎日数が3ヵ月すべて17日以上の場合
4月、5月、6月に支払われた報酬の合計額をその月数「3」で割った平均額を標準報酬月額とします。

 
②支払基礎日数に17日未満の月があるとき
17日未満の月がある場合は、17日未満の月を除いて平均額を算出します。
③3ヵ月すべてが17日未満のとき
従前の標準報酬月額をそのまま9月以降の標準報酬月額として用います。

4. 保険料額表から等級を確認する
3で計算した平均額をもとに、都道府県別の標準報酬月額保険料額表で該当の等級を確認します。  

5. 届出書に記入し年金事務所もしくは健康保険組合に申請を行います。

算定基礎届作成時の注意点
算定基礎届を作成する際には、いくつか注意するポイントがあります。誤って申請すると修正して再度提出することになりますので、間違えないよう確認しながら進めてください。
 
【ポイント1】給与が翌月払いの場合
標準報酬月額の支払基礎日数をカウントする場合、間違えやすいのがこのケースです。 計算期間が3月の給与を4月に払う場合、4月の支払い日数は30日ではなく、3月の報酬を計算する基礎日数となるので31日。 5月は30日、6月は31日となります。


【ポイント2】昇給差額分が支給されたとき
さかのぼりで昇給があり、4月、5月、6月のいずれかの月にその差額支給があった場合、算定基礎届の対象月前の分の昇給差額分は、含まずに届出を行います。 例えば、5月に、3月、4月分の昇給差額(5,000円×2ヵ月分)が支払われた場合、3月分は算定基礎届の対象外なので対象月前の差額分(5,000円)を除いた額を5月の支給額とします。
【ポイント3】4月~6月が繁忙期の場合
業務の性質上、4月、5月、6月の3ヵ月間の報酬をもとに算出した標準報酬月額と前年7月~当年6月までの1年間の報酬の月平均額によって算出した標準報酬月額に、2等級以上の差があり、この差が業務の性質上、毎年発生することが見込まれる場合は申し立てにより過去1年間の月平均報酬月額により標準報酬月額を算定します。
提出時期と提出先


書類の提出期限は毎年7月10日(10日が土日の場合は、翌営業日)までとなっています。管轄の年金事務センターまたは年金事務所へ提出することになりますが、健康組合に加入している事業主の場合は、健康保険分の届出を健康保険組合へ、厚生年金部分の届出を年金事務所へ提出することになります。健康保険組合の提出期限は、日程が異なる場合もありますので、注意が必要です。




なお本稿は令和5年3月31日時点の情報を元に執筆しています。法改正等で内容が実際と異なる場合もありますので、詳しくは管轄の年金事務所や健康保険組合へお問い合わせください。



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