年末調整について

query_builder 2023/10/10
社労士業務のワンポイント
今年も早いもので10月になり、残り2ヵ月半ほどとなりました。人事労務を担当されている方にとりましては年末の一大イベント『年末調整』の時期になり、諸々の準備を始めている事業所様も多いかと思います。 そこで今回は年末調整業務についてお話させていただきます。人事労務を担当されていない方も御自身の収入に関わる事なので、この機会に御一読いただき、理解を深めていただけますと幸いです。
1.年末調整とは?
年末調整とは、その年の1年間に給与や賞与から天引きされた所得税の過不足を調整する手続きのことです。基本的に会社は、従業員に支払う金額から所得税を計算し、その分を給与から差し引いて国に納税する源泉徴収を毎月行っていますが、その時点では概算での計算を行っております。そのため、その年の最終給与が支払われ1年間の収入が確定した後に改めて計算、正しい所得税額を算出し、過不足なく納税するために行っている業務が年末調整になります。
●確定申告とは?
ちなみに年末調整と混同しがちな『確定申告』ですが、確定申告は、個人事業主やフリーランスの方が、毎年2月から3月の期間に、自分で前年の所得を申告する手続きを指します。例外はありますが、基本的に会社員は勤務先で年末調整を行うため、自分で確定申告をする必要はありません。
●年末調整対象者は?
年末調整の対象となるのは、原則として、勤務先に『扶養控除等申告書』を提出している人ですが、給与の収入金額が2,000万円を超える人など、一定の方は年末調整の対象とはなりません。 従業員の方は『扶養控除等申告書』を、その年の最初の給与の支払を受ける日の前日までに勤務先
(2か所以上から給与の支払を受けている人は、主たる給与の支払を受けている勤務先。)に提出することになっています。


年末調整業務の担当者は、この申告書の情報から、扶養控除等の額(扶養控除、障害者控除、寡婦控除、ひとり親控除、勤労学生控除)を確認し、他、『基礎控除申告書』『配偶者控除等申告書』 『所得金額調整控除申告書』『保険料控除申告書』等の情報を基に年間の所得税の計算を行います。 毎月の給与や賞与で控除していた所得税の合計額と比較して、多く控除していれば還付、少なければ徴収されることになります。


2.令和5年の年末調整変更点
本年の変更点は大きく分けて3点あります。正しく年末調整を行うためにも変更点を理解する事が重要になりますので、確認して進めるようにしましょう。
①非居住扶養親族の適用要件の変更
30歳以上70歳未満の非居住扶養親族(国内に住所を持たない扶養親族)についての扶養控除の要件が厳しくなり、以下の条件のいずれにも当てはまらない人が除外されます。
 ●留学により国内に住所及び居住を有しなくなった者
 ●障害者
 ●扶養控除の適用を受けようとする居住者から、その年において、生活費または教育費に充てるために38万円以上の送金を受けている者
この内、「留学により国内に住所及び居住を有しなくなった者」については留学ビザなどの書類、「38万円以上の送金を受けている者」に該当する場合は、38万円以上の送金関係書類を、証明書類として添付する必要があります。
近年、各顧問先の従業員様で外国人の方が増えてきた事を実感いたします。年末調整の際にトラブルにならないよう、事前に証明書類を準備しておくよう周知をお願いいたします。
②扶養控除申告書に「退職手当等を有する配偶者・扶養親族」「寡婦又はひとり親」欄の追加
令和5年から「扶養控除等(異動)申告書」の様式が変更され、「住民税に関する事項」に「退職手当等を有する配偶者・扶養親族」欄と「寡婦又はひとり親」欄が追加されました。変更の背景にあるのは、住民税の控除が見逃されているケースが多いためです。納税者に退職金をもらった配偶者や扶養親族がおり、この人たちの合計所得が退職所得を含めなければ48万円以下になった場合、住民税では配偶者控除、扶養控除が受けられます。しかし、この制度を利用していない人が多いため、記入欄が追加されました。
③住宅ローン控除区分の追加・変更
住宅ローン控除については、令和3年度・令和4年度の税制改正において、立て続けに個人所得税の中心的な改正内容となりました。住宅ローン控除を受けるには、初年度に確定申告が必要で、年末調整で手続きするのは2年目以降になるため、本年の年末調整より反映されたものを確認する事になります。

●住宅ローン控除の借入限度額・控除率・控除期間
令和4年から令和7年までの間に入居した場合の「住宅借入金などの年末残高の限度額」「控除率及び控除期間」が住宅の種類などに応じて変更され、住宅性能と入居開始年の区分別の、借入限度額・控除率・控除期間が以下のように変更されました。
・借入限度額:住宅性能、居住開始年別に変更
・控除率:1%から0.7%へ変更
・控除期間:新築住宅は13年へ延長。中古住宅は従来どおり10年
・震災再建住宅:控除率0.9%、控除期間13年に変更

●住宅ローン控除適用対象の所得要件
従来、住宅ローン控除適用の所得要件は、その年の合計所得金額が「3,000万円以下」でしたが改正により、適用対象者の所得要件が「2,000万円以下」へ引き下げられました。基礎控除や配偶者控除などの要件確認時に、給与以外の所得がある従業員についてはご注意ください。

●新築住宅床面積40平方メートル以上の住宅の要件
床面積40平方メートル以上50平方メートル未満の住宅(特例特別特例取得)について、令和3年1月1日から令和4年12月31日の期間で適用されていました。今回の変更により、令和5年12月31日以前に建築確認を受けた住宅の取得においても適用とされました。ただし、合計所得金額が1,000万円以下という所得制限があるため、注意が必要です。


3.令和6年以降の年末調整変更点
令和6年以降にも変更点がございますので、対応について確認しておきましょう。

●国外居住親族への「送金関係書類」の提出書類範囲追加

送金関係書類としては、金融機関またはクレジットカード会社が発行した書類またはその写しが認められていますが、令和6年以降は、ステーブルコイン(法定通貨などと連動するように設計された暗号資産)の電子決済の証明書類が加わる予定です。

●「保険料控除申告書」 記載事項の簡素化

令和6年10月1日以後に提出する「給与所得者の保険料控除申告書」について、以下の記載事項の簡素化(記載不要)が予定されています。
・申告者が生計を一にする配偶者とその他の親族の負担すべき社会保険料を支払った場合の これらの者の申告者との続柄
・生命保険料控除の対象となる支払保険料等に係る保険金等の受取人の申告者との続柄

●住宅ローン控除申告書への借入金残高証明書の添付不要

令和4年の税制改正により、令和5年1月1日以降に取得した住宅については、従来年末調整時に住宅ローン控除を受けるために提出していた「借入金残高証明書」の添付が不要とされました。この内容は令和5年以降の住宅取得にかかる場合であり、年末調整としては令和6年から適用になると思われます。
また、令和5年以前に住宅取得している場合は、従来どおりの提出となるようです。


年末調整は、所得税法で定められた雇用主の義務となっております。会社が年末調整をしなければ、従業員は払いすぎた税金が還付されないことになります。そのため、正しく行っていない会社には、罰則が課せられる場合がありますので、年末調整を正しく行うためには、従業員の皆様へ年末調整の理解を深めてもらう事、余裕を持ったスケジュールを計画する事等が重要になります。
また,年末調整はあくまでも自己申告になりますので、書類を提出する側も年末調整についてきちんと理解をしておかないと不利益を被る事になります。
また近年は税務署や市区町村へ法定調書を提出する際にマイナンバーの記載が義務付けられておりますので、以前はかなりの時間を要していた被扶養者の所得確認も早くなっているようです。税務署からの確認の連絡も増えておりますので、御注意下さい。
年末調整の実務は限られた時間の中で大量の書類を確認する時間が多くを占めます。書類に不備があれば、時間を取られ確認する時間も少なくなっていきます。年末調整書類を提出する側・年末調整を担当する側の両方が年末調整についての理解を深めれば、時間の短縮に繋がり、漏れやミスもなくなり、お互いが不利益を被る事は少なくなります。
この機会にぜひ年末調整についての理解を深め、お互いに協力し合える環境を整えていただけますと幸いです。

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