年末調整について

query_builder 2024/10/10
社労士業務のワンポイント



つい先日まで酷暑の日々が続いておりましたが、10月になり、ようやく過ごしやすい季節になりました。
今年も残すところあと三ヵ月を切り、人事労務を担当されている方は、年末の一大イベント『年末調整』について諸々の準備を始めている頃かと思います。
そこで今回は年末調整業務のお話しいたします。人事労務を担当されていない方も御自身の収入に関わる事なので、この機会にぜひ御一読いただき、年末調整についての理解を深めていただけますと幸いです。



1.年末調整とは?
年末調整とは、その年の1年間に給与や賞与から天引きされた所得税の過不足を調整する手続きのことです。基本的に会社は、従業員に支払う金額から所得税を計算し、その分を給与から差し引いて国に納税する源泉徴収を毎月行っていますが、その時点では概算での計算を行っております。そのため、その年の最終給与が支払われ1年間の収入が確定した後に改めて計算、正しい所得税額を算出し、過不足なく納税するために行っている業務が年末調整になります。
ちなみに年末調整と混同しがちな『確定申告』ですが、確定申告は、個人事業主やフリーランスの方が、毎年2月から3月に、自分で前年の所得を申告する手続きを指します。例外はありますが、基本的に会社員は勤務先で年末調整を行うため、自分で確定申告をする必要はありません。
年末調整の対象となるのは、原則として、勤務先に『扶養控除等申告書』を提出している人ですが、給与の収入金額が2,000万円を超える人など、一定の方は年末調整の対象とはなりません。 従業員の方は『扶養控除等申告書』を、その年の最初の給与の支払を受ける日の前日までに勤務先(2か所以上から給与の支払を受けている人は、主たる給与の支払を受けている勤務先)に提出することになっております。
この申告書は、扶養親族や源泉控除対象配偶者などがいない人でも提出しなければならないこととされており、提出のない人が支払を受ける給与に対する源泉徴収税額は、税額表の「乙」欄が適用されることになります(この申告書を提出した場合よりも高い税率が適用されます)。
年の中途で控除対象扶養親族であった人の就職、結婚などにより人数に変更があった場合はその都度、提出することになっています。
年末調整業務の担当者は、この申告書の情報から、扶養控除等の額(扶養控除、障害者控除、寡婦控除、ひとり親控除、勤労学生控除)を確認し、他、『基礎控除申告書』『配偶者控除等申告書』 『所得金額調整控除申告書』『保険料控除申告書』等の情報を基に年間の所得税の計算を行います。 毎月の給与や賞与で控除していた所得税の合計額と比較して、多く控除していれば還付、少なければ徴収されることになります。

2.令和6年の年末調整変更点
本年の年末調整において注意すべき点は何と言っても「定額減税」ですが、それ以外にも改正点が主に3つあります。
「扶養控除等申告書」の簡略化

「扶養控除等申告書」については、記載内容が前年と同じであれば、「前年から異動なし」と記載した申告書(「簡易な申告書」といいます)を提出するだけで良くなります。
簡易な申告書には、以下の項目のみ記載されていれば良いようです。
●氏名 ●住所 ●マイナンバー(勤務先が管理している場合、記載不要)
しかし、注意していただきたい点としては、「変更が無い」というのが、扶養親族の増減が無いというだけでなく、増減が無くとも昨年15歳だったお子様が今年16歳になると、年少扶養親族から通常の扶養親族になるので、この場合には変更有りとなり、簡易な申告書の提出は出来なくなるという点です。

扶養親族について注意すべき年齢は以下になります。
 ● 16歳:年少扶養親族→控除対象扶養親族
 ● 19歳:控除対象扶養親族→特定扶養親族
 ● 23歳:特定扶養親族→控除対象扶養親族
 ● 70歳:控除対象扶養親族→老人扶養親族

年齢だけでもこのくらい気を付けなければならず、他の要件もありますから税務知識がかなり必要になります。また、この簡易な申告書は令和7年1月以後の給与から適用のため、令和6年の扶養控除等申告書をベースにすることになります。そのため、今年分に変更がある場合には最後に正しい令和6年の扶養控除等申告書を提出している必要があります。
保険料控除申告書」の一部記載不要

「保険料控除申告書」についてですが、保険金の受取人や社会保険料の負担等の欄に、「あなたとの続柄」を記載する必要が無くなりました。また、新しい「保険料控除申告書」には、そもそも続柄の記載欄が無くなる予定です。
この項目はこれまでもしっかりと記載されている事は少なかったと思うので、実務的な影響はあまり無いかと思われます。 こちらは令和6年10月1日以降の「保険料控除申告書」から適用されるので、今年の年末調整からこの申告書になります。
「住宅ローン控除の残高証明書」の提出方法

すでに「生命保険料等の控除証明書」は、マイナポータル連携を使えば証明書の添付は不要となっていますが、そこに「住宅ローン控除の残高証明書」も今年から加わることになります。 今までは、郵送されてきた「住宅ローン控除の残高証明書」を、従業員が事業者へ提出し、事業者が税務署へ提出(実際には事業者保管)していましたが、今後は銀行等の金融機関が残高証明書を国に提出し、従業員はマイナポータルを通じて取得が可能となります。これを「調書方式」といいます。
なお「調書方式」にしたい方は、住宅ローンを借りている金融機関に「住宅ローン控除の適用申請書」を提出する必要がありますが、この申請書は、税務署の指定様式が無いので、金融機関ごとに異なります。
また「調書方式」に対応するには金融機関側でシステム改修が必要になるため、経過措置が設けられており、その間は従来の証明書方式での手続きが可能となっております。「調書方式」へ移行した金融機関の一覧は国税庁のHPでも確認出来るようですので、年末調整の際に御確認下さい。
3. 年末調整での「定額減税」(年調減税)
最後に「定額減税」(年調減税)についてですが、以下の手順になるかと思います。
  ① 定額減税の対象者を再確認・確定する。
  ②   例年通りの年末調整を行い、年税額を確定する。
  ③   年税額と定額減税額と比較し、過不足があれば、還付または徴収する。
今年の6月1日に一度定額減税の対象者を確定しているはずですが、それ以降の扶養の増減について確認する必要があります。なぜなら、6月1日時点では扶養親族でなくても、12月31日時点で扶養親族となっている場合があるためです。例えば、10月に子どもが生まれた場合など、月次減税額の計算には含めていなかった人でも年調減税額の計算に含めることになるため注意が必要です。
扶養の増減については、「基礎控除申告書」、「配偶者控除等申告書」、「扶養控除等申告書」から判断する必要がありますが、配偶者については「所得税計算」と「定額減税」とで定義が異なるので、特に注意が必要になります。
あと控除対象者の特定で困るのは、年末での増減です。特に出産については、予定日はあっても確定ではないので、今年の出産か来年の出産になるかは誰にも分かりません。
いずれにしても、個人の所得税は12月31日現在の状況で最終決定されるのに、12月15日くらいには年末調整を完了しなければならないので、当然に多少の問題は発生します。それを想定し、事業所内でどうするかをあらかじめ決めておくことが大切です。
これまで、定額減税を正しく行っている場合、6月2日以降に入社された方や、扶養の増減があった方は、必ず「年調減税」をする必要があります。また、今年入社された方については、前職があれば前職分の源泉徴収票を提出してもらう必要がありますので、早めに手配してもらいましょう。
「年調減税」対象外の方は、給与収入2,000万円以上の方、退職している方、乙欄の方です。これらの方は、そもそも年末調整対象外ですので、これまでの給与支給額や定額減税額等を集計し、源泉徴収票に転記すれば完了です。
定額減税以外については、先に記載した申告書等の変更があるだけで、保険料控除額の計算等には変更がありませんが、定額減税の実施額については、源泉徴収票に記載する必要があります。
以上のとおり、今年の年末調整では定額減税への対応が必要となるため、例年に比べて確認事項が増え、処理も複雑になることが予想されます。早めに対応を検討し、準備を開始しましょう。

4. 最後に
年末調整は、所得税法で定められた雇用主の義務となっております。 会社が年末調整をしなければ、従業員は払いすぎた税金が還付されないことになります。そのため、正しく行っていない会社には、罰則が課せられる場合がありますので、年末調整を正しく行うためには、従業員の皆様へ年末調整の理解を深めてもらう事、余裕を持ったスケジュールを計画する事等が重要になります。
また年末調整はあくまでも自己申告になりますので、書類を提出する側も年末調整についてきちんと理解をしておかないと不利益を被る事になります。また近年は税務署や市区町村へ法定調書を提出する際にマイナンバーの記載が義務付けられておりますので、以前はかなりの時間を要していた被扶養者の所得確認も早くなっているようです。税務署からの確認の連絡も増えておりますので、御注意下さい。
年末調整の実務は限られた時間の中で大量の書類を確認する時間が多くを占めます。書類に不備があれば、時間を取られ確認する時間も少なくなっていきます。年末調整書類を提出する側・年末調整を担当する側の両方が年末調整についての理解を深めれば、時間の短縮に繋がり、漏れやミスもなくなり、お互いが不利益を被る事は少なくなります。この機会にぜひ年末調整についての理解を深め、お互いに協力し合える環境を整えていただけますと幸いです。

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