仕事も人も地道にバージョンアップが必要!
私の12年間会社経営の自戒も込めて申し上げたいと思います。
創業の数年間は、事業を軌道に乗せるために、夜討ち朝駆けの日々で、ほぼ休みの無い生活でした。 立ち上げた事業はどうしても営業活動に偏り、内務関係が滞りがちであったため、何としても会社をまとめて くれる即戦力が欲しいとのことで、前職や外部から、幹部社員として多くの方をお招きすることになりました。 しかし仕事のペースや、価値観合わせが難しく、中々定着いただくことが出来ませんでした。
同じようなお悩みを抱えるお客様も多く、様々なケースを経験させていただいたことで、大切な「法則性」を 発見することが出来るようになってきました。
ケースバイケースではありますが、結論は中小零細企業においては、“人材育成は経営者の仕事” という ことです。他人任せではダメです。
人は経験を積むことで、一人で業務の対応が出来るように成長してきます。もし、この経験を積むための、 いわゆる見習い期間の必要な新人育成が面倒だからといって、他社から経験のあるベテランの人を高いサ ラリーで連れて来ますと、程なくして以下のような状況になってきます。
(A) 先輩社員たちを無視して、自分のやり方を押し通そうとする。 (B) 上司に対しては、他社での経験により、自称の最新理論を唱えて、如何に従来のやり方が 間違っているのかを主張し、自分に任せて欲しいと媚び始める。 (C) その社員の人間性に問題がある場合は、その内に、従来の先輩社員の悪口を吹聴し、リ ストラを奨励したりと、上司や経営者に言葉巧みにその実行を促す。 (D) この段階で、新参者の心無い御注進に呆れた、古くからの良い社員が自ら辞め始める。 (E) そして程なくして、社内の業務や社内全体が、上手く稼働しなくなってくる。 (F) 漸く経営者が、その新しいベテラン社員が原因だと気付いた時には、時既に遅く、会社は 立ち直れないほどのダメージを受けているといった状態に陥ります。下手をすると倒産してし まうケースも見られます。 |
「急いては事を仕損じる」 という諺は、様々な場面で我々に示唆を与えてくれます。
大切なことは、入口でしっかりと人材の見極めを行い、人間性の良し悪しをフィルターにかけていくことです。 特に責任ある地位を保証する場合は、「地位特定者の労働契約書(写真①)」を締結し、自己申告 能力と実際の能力との間に大きな乖離があった場合や、大口を叩いて結果責任を自ら負ったにも関わらず、 低実績しか出せなかった場合に、ルールに基づいて低評価査定と降格減給が合法的に出来る仕組みを構築しておくことです。
その上で、新参者のベテラン社員に、いきなり100%任せるなどの行為を戒め、経営計画書(写真 ②)などで、自己の経営における理念や、生きる上における信念などを共有しながら刷り込んでいくことをお 勧めします。そして価値観共有がしっかりと行われたのちに、少しずつ権限を委譲していき、評価を行い、課 題を明確にして、解決策を提示していく・・・。
この一連の流れを、時間を共有しながら行っていくことが重要です。
私の経験では、これを実行できなかったときは余り上手くいきませんでした。一方、意識してこれを実行でき た時は、期待通りの良い結果を得られたように思います。
価値観合わせは時間の共有でしか実現できないといわれています。僅かな時間でも、上手く工夫していけ ば共有していくことが可能です。