解雇の基礎知識⑨

query_builder 2017/07/18
人事労務編
Q)問題社員や能力不足の社員に辞めてもらいたいと考えていますが、どのような点に注 意すればいいのか、基本的なことを教えてください。
A)パート④の「円滑な解雇の方法は?」でもいくつか申し上げましたが、より具体的、 かつ法律上の解釈を交えて解説させていただきます。


<能力不足による解雇の過去の判例のポイント>


①・・・労働者が雇用時に予定された能力を全く有さず、再三の指導にもかかわらずこ れを改善しようとしないような場合は解雇せざるを得ない・・・【解雇有効】


②・・・原告が解雇されるまでの2か月弱の間に、会社が期待するような職責を果たす ことは困難であり、その後の雇用を継続しても原告がそのような職責を果たさなか ったであろうとも認められない・・・【解雇無効】


③・・・小規模の企業であって、原告の資質、能力に適した職場に配置することは困難 であることからすると、解雇もやむを得ない・・・【解雇有効】


④・・・「人事本部長」と地位を特定した雇用契約であり、被告には、人事本部長として 不適格と判断した場合に異なる職位・職種への適格性を判断し、当該部署への配 置転換等を命じる義務はない・・・【解雇有効】


⑤・・・「マーケティング部部長」という特定の地位に就くこと、その地位に応じた能力を 発揮することは、労使間の契約内容である。会社は、解雇するに際し、下位の職種 に配置転換すれば雇用が継続できるかどうかを検討する義務はない・・・【解雇有 効】


⑥・・・能力が平均的な水準に達していないというだけでは不十分であり、著しく労働 能率が劣り、しかも向上の見込みがないことを要する・・・【解雇無効】


上記からみえることは、著しい能力不足の場合は解雇が出来るということです。ただし、 一般的には、その前提として「解雇回避の努力」を行うことが求められます。一方、「地位 を特定した労働契約」を締結した場合は、能力不足による解雇は比較的認められている ようです。


労働契約法 第16条:

「解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場 合は、その権利を濫用した者ものとして、無効とする。」


第一要件:「客観的に合理的な理由を欠く」


<合理的理由>

①労働者の労務提供の不能や労働能力または適格性の欠如・喪失

②労働者の規律違反の行為

③経営上の必要性に基づく理由

④ユニオンショップ協定に基づく労働組合の解雇要求


第二要件:「社会通念上相当と認められない」

解雇することが酷ではないか。使用者側の注意・指導・管理等とのバランス。


<判断のポイント>

①使用者の不法な動機・目的はないか

②労働者に情状酌量の余地はないか

③他の労働者の処分との均衡はとれているか

④使用者の対応、落ち度はどうか

⑤解雇手続きの不履践(法律用語:実践しないこと)はないか


<能力不足・勤務態度不良のポイント>

①職務遂行能力・適格性の欠如・不足、勤務成績不良⇒労働義務の不完全履行

②成績不良の正社員の解雇に関しては、裁判例は消極的

③労働者の勤務態度や協調性等を事由とする場合の考慮すべき具体的事情

④企業の種類、規模、職務内容、労働者の採用理由

⑤勤務成績、勤務態度の不良の程度とその回数 ⑥改善の余地があるか、本人の反省の程度

⑦会社の指導があったか

⑧他の労働者との取扱いに不均衡はないか

⑨一定の能力やポストを前提としたキャリア採用の解雇・・・・使用者に求められる配 転等の解雇回避の努力の程度が軽減されるなど、通常の労働者より肯定されやす い傾向がみられる


企業の経営者、経営担当者の皆さんに申し上げたいことは、安易な採用を避けて、真 剣に採用に取り組んでいただきたいということです。


採用側の口約束や軽い思い込みによる発言を真に受けて、入社を決意する労働者も 沢山います。ところがこの軽い思い違いが思わぬ落とし穴になることが多々あります。

多くの労働問題に携わっておりますと、この入社時の思い違いが、ボタンのかけ違い となって、入社時から継続して、労使間の方向性やベクトルが合わなくなっていること多 いようです。また、人間は自分にとって都合のいいことしか覚えない生き物のようであり、 現実に一方にとって重要な事項も、相手方には全く記憶にも止まっていないという事例 を数多くみてまいりました。

後々のトラブルに発展させぬよう、入社や退社など、社員の人生にとっての大きな選 択事項に際しては、証拠となるよう書面を取り交わすことを忘れないでいただきたいと思 います。

「採用は、入口で手を抜くと、出口で10倍苦しみます」

このようなことにならないよう、「入社時のルール」を早急に整備してください。


~ご参考~

<その他の解雇・懲戒事由・違反行為等>


1.懲戒解雇

①職務懈怠(けたい):労働義務違反(債務不履行)に止まらず、企業秩序を侵害し、 他の従業員の士気に影響を与える。

②経歴詐称:

(1)履歴書や採用面接において、学歴・職歴等を偽ることをいい、経歴を高く詐称する ことのみならず、低く詐称することも含む。

(2)裁判では「重要な経歴の詐称」に限り認められ、職種に応じ具体的に判断される。

(3)真実を告知していたら採用しなかったであろう重大な経歴の詐称であったかどうか を基準とする。

(4)労働契約締結にあたり使用者が経歴の申告を求めた場合、労働者は原則としてこ れに応ずる義務がある。

(5)履歴書の賞罰欄にいう「罰」とは一般的に確定した有罪判決を意味する。

(6)「病歴」についても、労働能力に影響のある病歴の詐称は懲戒解雇事由となる。


2.業務命令違背

①日常的な業務指示、命令のほか、配転・出向・出張などの人事命令、時間外・休日 労働命令等の労働時間に係る命令、経営秩序の規律違反に関する命令がある。

②まずは業務命令が労働契約の範囲内の有効なものか、有効として、さらに業務命 令違反による企業秩序の侵害の有無・程度、業務命令の程度に照らして処分は重 すぎないか、処分の公平性を検討。

例)配転命令拒否、時間外労働命令拒否


3.業務妨害

①会社経営陣への反対活動など

②服装・髪型

③人格や個人の自由にかかわる事項であり、制限の必要性、合理性等の観点から相当性を検討

④セクハラ・パワハラ

「セクシャル・ハラスメント指針」(平18年厚労告615号)、「職場のパワーハラスメント の予防・解決に向けた提言(厚生労働省「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円 卓会議」など参照


4.秘密保持義務違反

①労働契約に伴い労働者が負う誠実義務としての秘密保持義務、競業避止義務

②労働契約(信義則)上の秘密保持義務と不正競争防止法の「営業秘密」の保護規 定


5.兼業・兼職禁止違反

職場秩序・労務の提供への影響の有無。


6.私生活の非行 行為により会社の社会的評価に及ぼす悪影響が相当重大であると客観的に評価される場合。


7.犯罪行為

横領、背任、収賄等


8.酒酔い・酒気帯び運転(業務外)

①人事院の「懲戒処分の指針について」

②就業規則でも重い処分になっていることが多い。懲戒処分にあたっては慎重を期す 必要あり。


9.内部告発・公益通報

公益通報者保護法の要件を満たせば、懲戒解雇は無効になる。

(直接雇用だけでなく、派遣労働者、請負労働者も適用の範囲内になる)

*公益通報とは・・・不正の利益を得る目的、他人に損害を与える目的その他不正の 目的でないことを要する。

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