肉体は借り物か
私は過去に2度、<あっ、死んだ>と思ったことがあります。一度目は5歳の頃、大阪の能勢の山奥の人 口ダムで水遊びをしていた時です。高さ6~7メートルのダムの上から下を覗いているときに、後ろ向きに下がっ てきた大人が私の背後にぶつかってきたのです。その瞬間に頭から真っ逆さまに落ちるであろう正にその瞬間に、 <あっ、死んだ>と思いました。その瞬間に僅か5年の人生が一瞬にして脳内をめぐりました。たまたま母がこの 子(私)危ないなと察して私に近づいているときだったので、間一髪空中に躍り出たところで片足を掴まれ、命 拾いをしました。
2度目は、21歳の頃一人旅でニュージーランド南島のマウントクックの麓のトレッキングコースから外れ、シ ャッターチャンスを求めて岩場を十数メートル上っているときです。私がつかんだ岩が崩れ、バランスを崩して空中 に完全に躍り出た時です。<あっ、死んだ>と思った瞬間に、前回と同じことが起きました。しかも今回はたっぷ り21年の記憶が脳内をめぐりました。そのまま後ろ向きに頭から落ちていくはずだったのですが、突風が吹いて 元の岩場に戻されました。
命を拾ったと分かったその時から、急に恐怖感に襲われ、最早シャッターチャンスどころではなくなり、慎重に岩 場を降りました。
今から考えると、私を守ってくださっている存在が、「まだ死ぬべき時ではない」ということで、命を救ってくださっ たのでしょう。有難いことです。
人は死を意識した瞬間に人生が走馬灯のように脳内を巡るという体験は、その後様々な機会に学ば せてもらい、自分の実体験と相まって、私の中で既定の事実と化しております。人間の記憶というものは思考で ありエネルギーであると思います。エネルギーである以上、時空に残存しているか、もしくは魂の中に上書きされ ているのではないかと考えております。
<肉体と魂は別物>との概念も定着してきており、<魂=生命体≠肉体>がほぼ理解できるようになって きました。肉体は滅びますが魂は永遠のように思います。我々が大切にするべきものはこの魂のようです。
そうすると肉体とは何なのでしょうか。
私の仮説ですが、肉体は魂を成長させるための、いわば天からの借り物ではないかと考えております。
<肉体の欲求>は3度の食事と十分な睡眠ですが、<魂の欲求>は周囲からの感謝やリスペクト(尊 敬)と考えており、最近では確信に変わってきております。これは、仏陀の教えでもありますが、この世にある土 地も、家も、財産も、家族も、仕事も、そしてこの肉体でさえも、一時的に自分がこの世(3次元世界)で 預かって使用しているだけであるようです。
我々人間は人生の荒波(平穏無事で無難な人生では魂の成長につながらない?!)をあの世で設計して 生まれてくるようです。
ところが、折角高尚な魂としての成長を期待して、借り物の肉体に生命体を宿してこの世に生まれてきたに もかかわらず、記憶を消去(消してこなければ成長が無い?)してきたために、本来の使命を忘れ、肉体に執 着し、家族に執着し、お金に執着し、仕事に執着しているのではないでしょうか。
重要なことは、
① 肉体を大切にするが、肉体に執着しないこと
② 家族を大切にするが、家族に執着しないこと
③ お金を大切にするが、お金に執着しないこと
④ 仕事を大切にするが、仕事に執着しないこと だと感じます。
ただ、今この瞬間を全力で、念を入れて生きることが何よりも大切のようです。
将来必ずやってくる「死」を考えますと、どんなことにも執着せず、手放すことだけは既に決まっているわけです。 いずれあの世に行くわけですから、借り物の肉体、お金、家族、仕事への執着を止めてみたら、我々の生活は どうなるでしょうか。
多くの人はお金で悩み、仕事で悩み、家族で悩み、肉体で悩みます。少なくとも私は今までこの4つで常に 悩み続けていましたが、ここ数年の私を取り巻く様々な事象から、最近では少しずつ、執着が薄れてきているよ うに思います。どうせあの世には持っていけないからです。この世で借りてきたものはあの世には持っていけないの です。レンタル料も支払っていない訳ですから、大切に扱うべきではないでしょうか。
自己所有すると執着が生まれます。借りたものはいずれ返却しなければなりません。そう考えると借り物は大 切に扱い、次世代につないでいけば良いのではないでしょうか。
次に使う人が気持ち良く使え、また次の世界(人)につないでいく。このように考えれば、私が今多くの方か ら相談を受けている、労務問題も事業承継問題もスムーズに解決していけるような気がします。
あの世があるとするならば、私が体験した人生の走馬灯のように、使用履歴、使用感、使用目的、などが天 にデータベースとして詳細に、映像付きで記録されているようです。どうも閻魔大王は時空に、あるいは人の脳 内に存在するようです。
<借りたものはきっちりとメンテナンスした上で手放して、この世に残していきましょう。>