恩返しの連鎖
昨年、尊敬する日野原重明先生(聖路加病院名誉院長:享年105 歳)が7月18日にお亡くなりになりました。 戦前は軍医として召集され、戦 後1970年によど号ハイジャックに巻き込まれるという波乱の人生でしたが、1 974年に聖路加病院学長に就任されてから晩年までは、数々の役職、名誉 職への就任、叙勲等を受けられ、100歳を超えてなお、世のため人のために 生涯現役を貫かれた偉人でした。その日野原先生のお言葉の中に、
「受けた恩を、その人に返すことは難しい。だから、どこの誰かは分からないけれど、これから出 会う人にお返しをするという気持ちで生きていきたい 」
という内容のものがありました。我々は日々の生活の中で多くの人やモノから恩恵を受けています。 しかしながら、私も含め大多数の人は、日常に精いっぱいの状態で余裕がなく、いただいた恩を意識 することすらできません。気が付いたら恩人はすでにこの世になく、恩返しはできなくなっていきます。
そこで、私は<頼まれごとは断らない!(ただし借金は私にではなく、お金に用があるためお断り させていただいております)>をモットーに多忙な毎日を送らせていただいております。
“忙しい”は言い訳にすぎません。「時間は自らが作り出すものである」との考えから、睡眠時間を 削り、休日を返上し、1日1食として時間を捻出してまいりましたが、その結果得るものが多く、こ の得たものを様々な形で発信させていただいております。特に小食によって細胞の活性化が始まり、 健康が回復、脳波の安定により記憶力が改善、潜在意識とつながりが増え、よりクリエイティブな 仕事の実践につながってきました。どうやら、“頼まれごとは天からの授かりもの”のようです。
当社の応接室にかかっている額には下記の文言が記されております。
2011年の3月の震災の時に初めての事務所移転のお祝いとして長谷川大二社長からい ただいたものです。孝行したいと思ったときに親はいないと昔から言われています。それでもいいので す。人は気づいて変わる生き物です。気づいた時から実践していけばいいのです。この言葉が書か れた額を希望して、お贈りいただきました。当社の宝です。
この言葉に感銘を受けて以来、仕事に取り組む姿勢で特に心掛けてきたことは、「恩返しの連 鎖」です。昨年来このコラムでも何度か取り上げてまいりましたが、多くの先人たちからいただいた知 恵や教えを、次世代にいかに繋いでいくかを考えるようになり、心の状態が充足されてきました。
「人は真理にたどり着くと、腹には溜まらないが肝には溜まる。するとものの見方や生き方が 変わり、物事に一喜一憂しなくなり、欲で動かなくなる」
と言われます。物事の判断は「損・得」ではなく「善・悪」で行うこと。これは経営コンサルティング業 を営む当社では徹底しております。そのために短期的には損をこうむることもありますが、社員の心 を荒ませる恐れのある判断を優先することはできません。損得で判断し、結果的に取り返しのつか ないことにつながる可能性が出てきますので、長い目で見たらむしろプラスになることが多いのです。 それよりも注力していることが、行動方針である、「仕事は日々全力、本気で取り組むこと」を徹底 することです。
アメリカの思想家で有名なエルバート・ハバードの言葉の中に、
「心を込めて仕事をするようにしなさい。そうすればあなたは必ず成功する。なぜそんなことが 言えるかと言えば、大半の人は、それほど心をこめて仕事をしている訳ではないからである」
という言葉があります。
そのほかにもエルバート・ハバートは多くの示唆に富む言葉を残してくださっており、お客様向けの 研修で使わせていただいております。
① 仕事に幸せを見出すことだ。そうしなければ、幸せとは何か、決してわからないだろう
② 人生で成功できない人に共通しているのは、せっかくの失敗を経験として生かすことが出 来ないことである
③ 報酬以上の仕事をしない者は仕事並みの報酬しか得られない
④ 挑戦をあきらめてしまうこと以外に、敗北はない。自己の内部以外に敗北はない。自分 自身が持つ目的意欲の弱さ以外に乗り越えられない障害はない
⑤ よい仕事をしてもらいたければ、忙しい人に頼め。他の人たちは時間がないから
⑥ 一日に少なくとも一つは、自分の力が及ばないようなことを成し遂げようとしない限り、大 した成功など期待できるものではない
上記は示唆に富む言葉です。人生を成功に導きたいとの願望を漠然と持っている人は数多くい らっしゃいます。そのような方には是非上記の①~⑥を実践していただきたいと思います。何故なら 私の存じ上げている成功者の方々の大多数が、これを実践しているからです。