労働時間の考え方

query_builder 2023/03/10
寺子屋
「1ヵ月60時間を超える時間外労働の割増賃金(残業手当)について、その割増率が50%になる」という労働基準法の改正が、本年4月1日から中小企業にも適用されることになり、より適正な労働時間管理が求められます。
そこで、多くの企業様で、判断に悩まれる「これは労働時間に該当するか否か?」について、ケースをもとに解説させていただきます。これからの労働時間の適正な管理にお役立ていただければと存じます。
■労働時間とは
使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいい、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たります。労働時間に該当するか否かは、労働契約、就業規則、労働協約等の定めの如何によらず、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものです。また客観的にみて使用者の指揮命令下に置かれていると評価されるかどうかは、労働者の行為が使用者から義務付けられ、又はこれを余儀なくされていた等の状況の有無等から個別に具体的に判断されます。
では、実際の事例をもとに具体的に考えてみましょう。



 
1研修・教育訓練の取扱い
研修・教育訓練について、業務上義務付けられていない自由参加のものであれば、その研修・教育訓練の時間は労働時間に該当しません。研修・教育訓練への不参加について、就業規則での減給処分の対象とされていたり、不参加によって業務を行うことができなかったりするなど、事実上参加を強制されている場合には、研修・教育訓練であっても労働時間に該当します。
≪労働時間に該当しない事例≫
終業後の夜間に行うため、弁当の提供はしているものの、参加の強制はせず、また参加しないことについて不利益な取扱いもしない勉強会。
労働者が、会社の設備を無償で使用することの許可を取った上で、自ら申し出て、1人でまたは先輩社員に依頼し、使用者からの指揮命令を受けることなく、勤務時間外に行う訓練。
会社が外国人講師を呼んで開催している任意参加の英会話講習。なお、英会話は業務とは関連性がない。
≪労働時間に該当する事例≫
使用者が指定する社外研修について、休日に参加するよう指示され、後日レポートの提出も課されるなど、実質的な業務指示で参加する研修。
自らが担当する業務について、あらかじめ先輩社員がその業務に従事しているところを見学しなければ実際の業務に就くことができないとされている場合の業務見学。


2.仮眠・待機時間の取扱い
仮眠室などにおける仮眠の時間について、電話等に対応する必要はなく、実際に業務を行うこともないような場合には労働時間に該当しません。
≪労働時間に該当しない事例≫
週1回交代で、夜間の緊急対応当番を決めているが、当番の労働者は社用の携帯電話を持って帰宅した後は自由に過ごすことが認められている場合の当番日の待機時間。


3.労働時間の前後の時間の取扱い
更衣時間について、制服や作業着の着用が任意であったり、自宅からの着用を認めているような場合には、労働時間に該当しません。交通混雑の回避や会社の専用駐車場の駐車スペースの確保等の理由で労働者が自発的に始業時刻より前に会社に到着し、始業時刻までの間、業務に従事しておらず、業務の指示も受けていないような場合には、労働時間に該当しません。


4.直行直帰・出張に伴う移動時間の取扱い
直行直帰・出張に伴う移動時間について、移動中に業務の指示を受けず、業務に従事することもなく、移動手段の指示も受けず、自由な利用が保障されているような場合には、労働時間に該当しません。
≪労働時間に該当しない事例≫
取引先の会社の敷地内に設置された浄化槽の点検業務のため自宅から取引先に直行する場合の移動時間。
遠方に出張するため、仕事日の前日に当たる休日に、自宅から直接出張先に移送して前泊する場合の休日の移動時間。

移動時間が「労働時間」に該当するかどうかは、先述の通り客観的に判断するので、名称にとらわれず実態を見て判断する必要があります。


【ケース1】 【ケース2】
・現場の作業を終えた後、車両で事務所へ戻ることを原則化していた。
・終業時刻を過ぎても、他の現場に行っていた従業員らが戻ってきていなければ道具の洗浄や資材の整理等を行っていた。
・道具の洗浄や資材の整理等が会社から黙示による指示がなされた業務であったと考えられる。
⇒移動時間が労働時間に該当する  
(平成20年2月22日東京地裁判決より)
・車両による事務所と現場の移動は会社の指示ではなかった。
・移動に使う車両の運転者、集合時刻等を従業員らで任意に決めていた。
・事務所と現場との往復は、通勤としての性格を多分に有していた。
⇒移動時間は労働時間に該当しない
(平成14年11月15日東京地裁判決より)


同じ事務所と現場の移動時間について争われた裁判例でも、その実態によって異なる判決がくだされており、移動時間が労働時間に該当するかどうかは個別に具体的に判断する必要があります。移動時間の取扱いについて、従業員と話し合い確認しておきましょう。悩まれた際には、担当コンサルタントにお問合せください。
<参照> 
厚生労働省「労働時間の考え方:『研修・教育訓練』等の取扱い」
厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」

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