年収の壁、突破?現状維持?

query_builder 2023/12/11
寺子屋

2023年10月から「年収の壁」に関する取扱いが変わりました。扶養に入っているパートやアルバイトの方にとって、この「年収の壁」を超えて働くと社会保険料の支払いが発生し、手取りが減ってしまうことも・・・。

そのため、11月から12月にかけて、本当はもっと働きたいのに、この「年収の壁」があるために働けないという問題があります。パートやアルバイトを雇用する会社にとっても、年末の忙しい中で収入調整のために休まれてしまうことにお悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。今回、政府の施策として、この壁に悩む労働者をサポートする新たな取組がスタートしました。どういう制度なのか、ご説明させていただきます。

(※この記事では「夫が妻を扶養する」という前提でご説明します)



【1.年収の壁とは?】
「年収の壁」とは、妻が夫の扶養範囲内で働ける年収目安のことを言います。

このように「年収の壁」にはいくつかの分類がありますが、特に手取り額に大きく影響するのが社会保険料の負担が発生する「106 万円の壁」・「130 万円の壁」です。保険料の負担が生じると、手取り額が下がってしまうため、今回、政府は、 年収の壁・支援強化パッケージ>を公表し、「年収の壁」の解消に向けた取り組みを始めました。具体的には次の3つです。
「健康保険・厚生年金保険適用で手取りが減少した社員」に対して、保険料負担を軽減する目的で手当を支給した企業に助成金を支給。
「社会保険適用促進手当」を健康保険・厚生年金保険保険料の算定基礎となる標準報酬の算定対象外にする。
国民年金の被扶養者要件「年収見込み130 万円」を超えたとしても、一時的なものであれば連続して2年までは扶養にとどまることができる特例を新設。


【2.年収の壁・支援強化パッケージとは?】
夫の扶養内で働く妻にとって、最も影響を受ける壁は「106 万円の壁」と「130 万円の壁」です。 < 年収の壁・支援強化パッケージ>ではこの2 つの壁に対して支援を行います。


◆「106 万円の壁」への対応
パート・アルバイトで働く社員の健康保険や厚生年金保険の加入にあわせて、手取り収入を減らさない ための取組(※)を実施する企業に対し、社員一人当たり最大50 万円の支援をする、というものです。
(※)手取り収入を減らさないための取組とは
➀社会保険適用促進手当の支給
イメージしやすいように具体的にご説明します。
例えば、年収104 万円の方(時給1,080 円×月間80H 相当)が年収106 万円(時給1,113 円×80H 相当)となり、新たに健康保険・厚生年金保険に加入する場合、社会保険料はおおよそ年間で 16 万円ほど負担が発生します。年収から保険料を引くと、手取り金額は90 万円となります。
(※)標準報酬月額88,000 円、東京都で試算(健康保険:4,400 円、厚生年金保険:8,052 円、介護保険:800 円)
そこで、企業がこの社会保険料相当額である16 万円を「社会保険適用促進手当」として社員 に支給した場合、手取り収入を減らさない取組をしているとして、企業に助成金が支払われま す。
この「社会保険適用促進手当」は、企業が社員の手取りを減らさないようにするために支給され る手当のため、社会保険料の算定対象外となります。つまり、この手当分にかかる企業の社会保 険料の負担もないので、企業側にとってもメリットがあります。

②賃上げによる基本給の増額

③所定労働時間の延長
社会保険が適用される社員に対して、週の所定労働時間を4時間以上延長するか、賃金を増額しながら週の所定労働時間を1〜4時間未満で延長した企業に対し、社員一人当たり30万円の支援をする、というものです。
次に2つ目の壁、「130万円の壁」への対応についてご説明いたします。


◆「130万円の壁」への対応
被保険者数が100人以下の企業に勤めている場合でも、年収が130万円の壁を超えると、夫の扶養から外れてしまうため、社会保険適用の働き方であれば勤務先の健康保険や厚生年金保険に加入するか、または国民健康保険・国民年金に加入することになります。
パート・アルバイトで働く妻が労働時間を延長する(残業)などして、収入が一時的に130万円を超えてしまった場合でも、企業がそれを証明することで連続して2年までは夫の扶養内でいることができるようになりました。
ただし、この措置はあくまで「一時的に収入が増えたことが要件」ですので、基本給などの固定給の増額で130万円の壁を超えてしまっている場合などは対象外となりますので注意が必要です。 なお、この措置の対象者は「配偶者」に限らず、「被扶養者(学生のお子様など)」も対象となります。
◆配偶者手当への対応
妻を扶養している場合に家族手当などで支給されている配偶者手当が、これらの収入の壁を越えてしまったことで不支給となることがあるため、この手当の支給要件が妻の収入調整となる要因の一つになることから、配偶者手当の見直しを促しています。
(厚生労働省「年収の壁支援強化パッケージ」より引用:https://www.mhlw.go.jp/stf/taiou_001_00002.html html)



【3.年収の壁・支援強化パッケージの注意点】
年収の壁・支援強化パッケージは、2025 年末までの暫定的な措置です。2026 年以降については今のところまだ何も決まっておらず、未定です。このような暫定的な措置の助成金は急になくなってしまうこともありますので、活用を検討される場合は最新の情報をご確認いただくことをお勧めします。

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