雇用保険の制度変更について

query_builder 2024/10/10
寺子屋


今年6月の通常国会において雇用保険法等の改正がありました。これは、働き方が多様化してきたため、現行の社会保障ではその対象にならない人が出てくることになり、そのような人を効果的に支える雇用のセーフティネットの構築や、「人への投資」の強化等を目的とするものです。
雇用のセーフティネット構築のために、雇用保険の対象を拡大することとしていますが、これは令和10年10月からの施行でかなり先のことになります。
今回は「人への投資」の強化などを目的とする改正について、ご説明させていただきます。



1.自己都合退職者の給付制限期間等の変更(令和7年4月1日施行)
労働者が正当な理由なく自己都合退職した場合、給付制限が行われて退職後すぐに失業給付(これを「基本手当」といいます)を受給することができません。しかし、こうした給付制限が労働者の円滑な労働移動を阻害しているとの見方もあり、改正されることになりました。
現在は、正当な理由のない自己都合対象者には基本手当を受けるために、ハローワークで手続きを行っても原則として3か月(令和2年10月からは2か月に短縮)は、基本手当を受けることができませんでしたが、転職を考える労働者が安心して再就職活動を行えるようにするため、この給付制限期間は1か月とすることになりました。
ただし、給付制限期間が短縮されると、基本手当を受給する目的で短期の入退社を繰り返す人が出てきますので、これを防止するため5年間で3回以上、正当な理由なく自己都合退職した人に対しては、現在でも給付制限期間を2か月ではなく、3か月とする取扱いにしていますが、給付制限期間が1か月になっても同様の取扱いが継続することになります。
2.リスキリングを伴う自己都合退職者に対する給付制限期間の解除
  (令和7年4月1日施行)
上記1とは別に、自ら教育訓練を受けて再就職を目指す労働者が円滑に求職活動を行うことができるよう、労働者自らの雇用の安定や就職の促進に資する教育訓練を受けた場合には、基本手当を受ける際の給付制限は行わないことになります。その際の教育訓練の概略は次のようなものとなる予定です。
ハローワークで指示された公共職業訓練等を受ける場合
厚生労働省が指定する教育訓練を修了した際に、受講費用の一部が支給される「職業訓練給付金」の対象となる教育訓練等を退職日前1年以内に受講した場合
②に規定する教育訓練を退職後に受講する場合


3.教育訓練休暇給付金の創設(令和7年10月1日施行)
労働者が自発的に自らの能力開発のために在職中に教育訓練を受講するために休暇(「教育訓練休暇」)を取得した場合に、その期間中の生活を支えるため基本手当に相当する給付金(「教育訓練休暇給付金」)が受給できることになります。
ただし、この給付金を受給するためには、その会社に自発的な教育訓練を受講するための教育訓練休暇制度がなければなりません。この休暇制度は無給でも構いませんが、厚生労働省の令和4年度の調査では、休暇制度を「導入している」という企業はわずか7.4%しかありません。教育訓練休暇制度を導入し、従業員にこの休暇を取得した場合にその企業に支給される助成金もありますので、従業員の能力向上のために導入を検討されてはいかがでしょうか。
現在、在籍している従業員がこの給付金を受給できる要件は概ね以下のとおりです。
(1)受給対象者

教育訓練休暇給付金の対象者は雇用保険の一般被保険者(季節的に雇用され、または短期の雇用につくことを常態とする雇用者、65歳以上の雇用者等を除きます)に限定されます。在職中の休暇取得時という前提がありますので、すでに退職している人は対象となりません。
(2)受給資格

その教育訓練休暇を開始した日(「休暇開始日」といいます)前の2年間に「みなし被保険者期間」が通算して12か月以上が必要となっています。「みなし被保険者期間」は概ね在職期間と考えてもいいもので、一部前職での雇用保険に加入していた被保険者期間も含みます。
また「算定基礎期間に相当する期間」が5年以上必要です。「算定基礎期間に相当する期間」も、概ね在職期間と考えてもいいもので、これも一部に前職での期間を含みます。

ただし、「みなし被保険者期間」、「算定基礎期間に相当する期間」とも詳細な定義があり、注意が必要ですので、詳しくは当社コンサルタントにお尋ねください。
(3)受給期間

教育訓練休暇給付金の受給期間は、休暇開始日から起算して1年間となっています。教育訓練休暇給付金は、この期間内の教育訓練休暇を取得している日について支給されます。
(4)日額および給付日数

教育訓練休暇給付金の1日当たりの給付額は、休暇開始日を退職日(離職日)とみなした基本手当の日額と同じ計算方法となっています。概ね以下のように計算されます。  <計算方法> [休暇開始日の6か月間に支払われた賃金÷180]×45~50%
(※上限は年齢によって異なり、令和5年8月以降の1年間は6,945円~8,490円になります。)
(5)基本手当との関係

失業時に雇用保険から支給される失業給付である基本手当を受給できるかどうか、また基本手当を受給できる期間は、退職前に在籍していた雇用保険の加入期間により決定されます。(一定要件を満たしている場合には、その前職での雇用保険の加入期間も含まれます。)
教育訓練休暇給付金を受給した場合、休暇開始日前の被保険者であった期間は、実際に基本手当の受給にかかる在籍期間から除かれることになります。すなわち、在籍時に基本手当を受給したことと同じ取扱いになりますので、この点では従業員の方には不利になることもありますから注意が必要です。
4.最後に
上記の「自己都合退職者の給付制限期間等の変更」「リスキリングを伴う自己都合退職者に対する給付制限期間の解除」は、退職した従業員が対象ですが、「教育訓練休暇給付金」は在籍している従業員が対象になります。教育訓練休暇給付金の概要は記載したとおりですが、さまざまな細部の要件もあります。教育訓練休暇を導入して在籍している従業員に受給を促す場合には注意が必要になりますので、詳細は当社担当コンサルタントまでお問合せください。








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