Chat GPT の可能性と組織対応、そして未来

query_builder 2023/05/10
寺子屋


Microsoft、Googleに続いて2023年4月14日にはamazonも生成AIへの参入を決めました。
世界の膨大なデータを握る米系企業の有利性がさらに加速していることに関しては日本人としてかすかな悔しさを感じないわけではないですが、それは別として人類が豊かになることには私は常にwelcomeです。
今後予想される大きな変化に関し、多くのコメントが発表されています。 「この次世代AIが、生産性向上の新しい波を呼び起こすと信じている。我々の思考、計画、行動する方法を根本的に変える」
(Microsoftのサピア・ナデラCEO:3/16、オンライン発表会)


一方、AIは、我々の仕事を奪う存在になり得るのか、という点については、現段階では「人間の創意工夫を支援するもので、人にとって代わるものではない。」(Adobeのシャンタヌ・ナラヤン会長兼CEO)という冷静な意見も多いように見受けられます。
私を含めて大半の者は生成AIの開発側には直接関与していませんので、個人として、あるいは自社の事業において生成AIがどう影響するか、活用できるかを考える必要があります。実用レベルのものがMicrosoft(Open AI)から発表されてまだ半年であり、企業への影響についてはいろいろな意見が出されているものの確たる動きは出ていないように見受けられます。一方、世界の利用者は発表2か月で1億人を超え、その後、「主要国3億人の雇用に影響が生ずる」との見方(3月末:WSJ)も出てきています。
個人的な感想としては、各種調査には引き続き文献やWebサーチを使うことになりそうですが、調査結果を要領よく文章や資料にまとめる際の「ドラフト」を作るにはとても役立つと思っています。文章を含む各種資料を作る者にとって「相当程度の」ツールになるのは間違いないです。
「たくさん覚えている近い話を引っ張ってきてうまくつなげているだけなんですが、つなげ方がうまい。」(東京大学次世代知能科学研究センター教授 松原仁氏)というコメントは的を射ていると感じます。
一方、出来上がる文章を見ると「一見」もっともらしいことを「真顔で」いいながら平気で嘘をついたり(・・・指摘するとすぐに謝る点は政治家より多少はマシなのですが)、考慮すべき点で根本的な知識にかけていたりと、「極めて危ない」ことが多々あることには大きな注意が必要です。しかし、これは仕事を部下に一定程度任せたりアウトソースしたりしても程度の差こそあれ同様なので、「自分のアシスタントが多少増えた」ぐらいに考えておけば問題ないとも言えます。要するに大切なことは、「自分が責任を追うのだから内容を自分の頭で良くチェック・吟味し、情報を加除しながら【自分のものとして】最終的に仕上げる」ことに尽きます。これを教育的観点からとらえれば、ある程度の知識・能力を身に付け、人間としての社会的経験の生じている年齢(私の意見では中学生以上)でないと十分使いこなせないし、使わない方がベターと思います。とは言っても「未成年者には酒を飲ませるな!」というのと似ていてきちんと防ぐには困難もあるので、Web情報への接し方と同様、「内容の真偽、適切不適切はケースによってマチマチなので、うのみにすることはダメ!」と、大人が例を示しながら事前にしっかりと教えておく必要があると思います。


<使う際には>
・想定しているケース(年齢・場所・商品等々)をできるだけ具体的にする
・アイデア出しでの活用に使う
・何回も「突っ込んで」聞いていく
・適切な答えが帰って来ないときには既知の事実を織り交ぜ、それに関連させて情報を引き出す
・推定や計算などをさせる際には「ステップを踏んで」と指示する
等のコツを押さえることが重要です。


生成AIは使い方によって極めて大きな効率性を生み出しますので、使いこなせる人に対して禁止するのは適切でないように思います。そういう意味では国として使用を禁止したイタリアの姿勢などより「頼り切ってはだめ。一方、その大きな可能性に目を向けるべき。」というスタンスをとっている東京大学学長の意見に私は賛同します。一個人としても、「こんな便利なもの、うまく使わなくちゃ損!」だと思います。なお、「創造性」の観点での可能性に関して、私はまだ評価できていませんが「数うちゃ当たる」的発想からすれば、可能性そのものは大きいものと思います。ただし一連の活用を通じ、結果を得る際に相手に与える情報はWebサーチなどと同様、蓄積され漏洩リスクにさらされるという代償を十分に含んでおく必要がありますので、会社PCや会社アカウントでの使用を禁じておくのが無難と思います。


メリット
・時間節約(素材の粗い調査と文章などの第1次ドラフト作成が極めて短時間に可能(注1)
・さらに今後のプログラム改善によっては限りない可能性を秘めている。 (注1)MicrosoftやGoogleによるビジネスアプリとの連携本格化によって文章以外の 資料への拡大も始まった。
デメリット
・情報漏洩(入力情報(個人情報・企業情報など)が蓄積され、漏洩リスクがある(注2)
・結果に関して内容チェック・校正が不十分だと誤った情報を拡散させてしまう。
・青少年以下の(学習期の)創造性を摘んでしまう。
(注2)これに関しては、ベネッセHD等、情報を企業内にとどめるスペシャルバージョンの 採用を決めた企業もある。
正しい使い方・注意点など
・ある程度の基礎知識と言語能力を持った大人が調査し結果をまとめるのを効率的に行う ことに使える。
・ただし調査する際の情報のインプットには論理性や適切な言語能力が要求される。 (これはWebサーチの際の単語の選定が結果に大きく影響を与え、重要であるのと同様)
・アウトプット結果を使う前には十分なチェックが必要。
・自らの頭で考え、判断しチェックできない幼い子供や学習途上の未熟な人間が使うのは 避けた方が良い。
・「人間によるチェックが重要」・・・これに尽きる。


次は、私が試してみた具体例を挙げてコメントしておきます。
回答内容そのもの(Chat GPT)は掲載しませんが、ご自分で実際にやってみていただくとわかりますし、エンジンは日々改良が続けられると思いますので、皆様が試されると4月初旬よりは改善されているかもしれません。


例1
ある業界団体の事務所住所は●●区〇〇X丁目Y番地Z号のAA階です。この団体の事務所はこの場所のみだと仮定し、その団体の在籍人数を推定してください。推定は同業種のオフィスの1人当たり平均所要面積や実際のそのビルのフロア面積などから、ステップを踏んで行ってください。
→アウトプット結果に関する感想
「ステップを踏んで」という要求が適切でした。
結果的には、公開情報や統計的情報をベースにかなりの精度で推定ができました。
例2
65才の年金受給権を持つ個人が給与を新たに得る場合を想定し、在職老齢年金(年金カット)や税金を考慮した最終手取り額がどのようになるかを、年間報酬(給与+賞与)が200万、500万、1000万、2000万のケースごとに表にまとめてください。
計算はステップを踏んで行ってください。結果の表には課税所得も明記してください。
ステップ:在職老齢年金、社会保険料負担、年金所得控除後の所得税・住民税 前提条件は以下の通りとします。    
 基礎年金80万円、厚生年金120万円。    
 社会保険料控除以外の所得控除は給与所得控除・年金控除・基礎控除のみ。    
 住民税率は一律10%
→アウトプット結果に関する感想
「一見」まともな表を作ってくれましたが、税務知識に欠けていて使い物になりませんでした。
四則演算のみとは言え、やや複雑な課題は苦手のようです。
例3
自社の株式を自分が80%、妻が20%持ち、成人した子供2人のいる中小企業経営者の事業承継・相続税対策について、事業の存続、従業員のモチベーション、家族の財産の保全等の観点でベストなアドバイスを教えてください。自分は現在70才であり、あと5年程度は何とか働けるものとします。また、子供2人の中に後継者は想定していません。
→アウトプット結果に関する感想
与えた用語を組み合わせて「知ったかぶり」の回答をくれましたが、全く内容のない、薄っぺらなものでした。
「専門家に相談すると良い」という極めてまともな回答が最後にあったのは救いです。



Chat GPT のできることには驚きを感じますし、便利に活用しようと思っているのは事実ですが、AI(Artificial “Intelligence”)というほどの知性を感じないのは私だけでしょうか? 本来知性とは、単なる知識やその寄せ集めではなく、それを人類の未来に向けて自ら創造的に活用することまで含めたものだと思うからです。本当に生成AIがその領域に達したらすごいことだと思いますが、そのためにはAIが哲学や倫理・価値観などを学ばないといけないので、ある種の危険性を伴ってきます。もちろん、いずれにしても、技術はとどまることなく、限りなく進むわけですが・・・
長々と書きましたが、企業経営に関するご相談がございましたら、「現段階では」生成AIなどに安易に頼らず、素直に私共にお任せください。状況をよくお聞きし、対話を重ね、適切で「知性的な」アドバイスをさせていただきます。



追記1 情報漏洩を防ぐため、本稿はもちろん、会社のPC・アカウントを離れて書きました。
追記2 編集中にChat GPTに重要なアップデートがされたので急遽追加しておきます。
(テクノロジーの世界は1週間、2週間単位で変化するので目が離せません!)
4/25、Chat GPT(Open AI)がプライバシーに配慮し新たに「プライバシーモード」を追加しました。 これによって利用者は「チャット履歴」を残さないよう設定でき、個人・企業とも 情報漏洩のリスクをミニマイズできます。



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