定年後再雇用者の処遇(最高裁判決)

query_builder 2023/10/10
寺子屋


今年(令和5年)の7月20日に最高裁で定年退職再雇用社員の処遇に関して、名古屋高裁の「6割未満は違法」という判決を破棄し、差し戻すという判断がくだされました。今回の「労務の寺子屋」では、この判決の持つ意味を考えたいと思います。  

名古屋高裁の判決以降、世間では「定年再雇用者でも現役の6割以上の処遇を維持しなければいけない。」とか「基本給を現役の6割以上にしておけば大丈夫だ!」等の意見もありましたが、そこに待ったがかかった感じです。
では、今回の最高裁の判決はどのようなものだったのか考えてみましょう。ここでは基本給についてのみ考えます。(賞与の部分は割愛させていただきます。)  

1.事案の概要
裁判は、名古屋自動車学校(愛知県名古屋市)で教習指導員として働く労働者2人が起こしました。再雇用後の賃金が、旧労契法第20条(パート有期法第8条「同一労働同一賃金」)が禁止する有期労働契約を理由とした不合理な労働条件に当たると訴えたものです。  

労働者らは、正職員として30年以上勤務後、平成25~26年に定年退職しました。定年後は嘱託職員として再雇用され、定年前と同様に教習指導員を務めていました。  
基本給は、定年前は月額18万1640円と16万7250円でしたが、再雇用後の1年間は8万1738円と8万1700円、その後は7万4677円と7万2700円にそれぞれ引き下げられました。
一審の名古屋地方裁判所と二審の名古屋高裁はともに、基本給の定年前の6割を下回る部分を違法と判断し、同社に損害賠償を命じました。  

職務内容と配置の変更の範囲が正職員と同一であるにもかかわらず、基本給が半分以下に減額されていると指摘し、労使交渉の結果も反映されておらず、不合理な労働条件に当たるとしています。同社と労働者らはそれぞれ敗訴部分を不服として上告していたものです。
2.最高裁の判断
最高裁は同社の上告を受理し、基本給の一部を違法とした二審判決を破棄し、審理を名古屋高裁に差し戻しました。  
基本給について、支給目的や性質の検討が不十分とし、労使交渉の具体的な経緯を踏まえていない点も法解釈の誤りとしました。また、嘱託職員と正職員は異なる性質や支給目的を有すると強調し、二審は正職員の基本給の年功的性格のみに着目しており、職務給や職能給としての性格の有無を検討していないとしました。  

3.差し戻しの理由
差し戻しの理由は、審理不十分としていますが、「最高裁は6割が基準になるのを嫌った可能性が高いのではないか」との意見もありますが、簡単にいうと、旧労契法第20条(パート有期法第8条)のいわゆる「同一労働同一賃金」の法律が求める検討が不十分である。ということです。  

4.同一労働同一賃金
では、「同一労働同一賃金」の法律が求める検討とは、いったいどのような検討でしょうか。 「パートタイム・有期雇用労働法」では、「同一企業内の正社員と短時間労働者・有期雇用労働者との間のあらゆる待遇について不合理な差を禁止する。」と規定されています。
その不合理かどうかを検討する要素は、以下のとおり大きく3つあります。(考慮要素)
①業務の内容および当該業務に伴う責任の程度(職務の内容)
➁当該業務の内容および配置の変更の範囲
③その他の事情
5.今後の見通し
最高裁が差し戻しをしたからと言って、差戻し審が企業に有利な判決を下すとは限りません。基本給を6割以上支払うことが妥当であるとの判断を下す可能性もあります。
要するに定年退職再雇用社員の基本給を決める場合は、先ほど説明しました同一労働同一賃金の考え方に照らして、その定年退職再雇用社員の職務の内容・責任、転勤や職種の変更があるのかないのか等を丁寧に検討したうえで決めなければならないということになります。
定年退職再雇用社員の処遇を検討する場合は、今までの延長線上で検討するのではなく、正社員とは異なるルールを新たに作り、定年退職再雇用社員の個々の能力や経験、該当者それぞれの方の価値観等を鑑みながら決定する必要があると思います。  

※   「定年退職再雇用社員の処遇についてどうのように決めたらよいのか?」や「同一労働同一賃金のことが良く分からない。」等、お困りのことがございましたら、ご遠慮なく当社コンサルタントにご相談ください。



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